本表は、以下の基準のいずれかに該当する言葉を「京都の方言」と見なして一覧にしたものです。
従いまして、必ずしもこの一覧に載っている言葉すべてが京都市特有の方言であるとは限りません。京都以外でも使われる言葉・言い回しが含まれている可能性もあります。
なお、このページのアクセントはすべて遅上がり反映済みです。
平素、普段のこと。
「鮎(あゆ)」の訛り。ユ→イ転訛したもの。
あいだのこと。
明るいさま。
元々「あかるい」というのは東日本語で、京都を含む西日本では「あかい」が普通だった。しかし「空があかい」と言うと、「空が赤い」という意味なのか「空が明るい」という意味なのか曖昧なせいもあってか、共通語が普及するにつれ、いつしか京都でも「明るい」のほうが主流となってしまった。
参照リンク(外部サイト)⇒『日本言語地図』第1集の「第29図 アカイを"明かるい"の意味で使うか」
ダメなこと。「らちがあかん」の略という。
「もうあかんわ。どうしょうもない」「あかなんだら、あかんってちゃんと言いやあ」
北へ行くこと。「上ル」と記す。元々京の北端に御所があったことから言うという。対義語は「さがる【下ル】」
「そのお店やったら四条をちょっとあがったとこや」
口元にできる炎症のこと。
「あくちができて痛い痛い」
味がおいしくないさま。「まずい」よりは語感が柔らかい。
「なんか今日のみそ汁あじないで」
「味気ない」を強調した言い方。
恨み。妬み。
また「誰々にあたんする」という言い方で、「当たりちらす」のような意味にも使う*4。
ゴキブリのこと。「ぼっかぶり」とも。
甘えん坊のこと。
「あの子はなんぼになってもあまえたやなあ」
「とりあえず今のうちはいい思いをさせておこう」「甘い汁を吸わせておこう」という意味。この言葉が使われる時は、だいたい後でしっぺ返しが来ることを暗示する。
ちなみに「ねぶる」とは「なめる」という意味。
「まあ、今のうちだけあいつに飴ねぶらせといたろやないか」
飴の丁寧な言い方。この手のさん付けについての詳細はこちらをご覧いただくとして、注意すべきは大阪ではこの言葉のことを「飴ちゃん」という風に「ちゃん付け」するのだということ。
「さん付け」と「ちゃん付け」。微妙な差異だけに混同なさらぬよう注意されたい。
「そんな飴さんばっかり舐めてたら、虫歯になるえ」
お餅のこと。ちなみに京都のお餅は普通丸い形をしている。
「あれは」という意味。「あれは→ありゃあ→あら」と変化したもの。同類として「こら」・「そら」などがある。
「あら何や?」
乱雑、乱暴なこと。荒い。荒っぽい。
不快感・嫌悪感を伴うていることが多い。
「そんなあらくたい扱いしてたら、お皿割れてしまうえ」
取扱いが乱暴なこと。
「これこれ、そんなあらけないことしたらあかんえ」
あのまま。
「ゆがむ」の訛り。ユ→イ転訛の代表的な例。
「この絵ぇ、なんかいがんでへん?」
下記の「行く」の否定形。東京で言うところの「いけない」に当たる。丁寧語は「いきません」
「いかん、こら失敗やわ」「そんなことしたらいきません」
息苦しい。
浮かれてはしゃいだり興奮したりすること。「いきり立つ」の前部「いきり」の原形「いきる」と同源か。
「何をあいつは一人でいきっとんにゃ」
上記の「行かん」の対義語。東京で言うところの「いける」に当たる。
「この服の組み合わせ、なかなか行くんちゃうか」
災害が起こることについても「行く」を使う。「火事が行く」「地震が行く」等。
「年行った(としいった)」の形で「年齢を重ねた」を意味する。「年の行ったお人」等。
意地悪のこと。「いけずする」の形で「意地悪する」の意味も。
「そんないけずせんと、仲良うしいな」
「行った」に同じ。
上方語では母音が短くなることはよくあれど、「っ」が抜け落ちるという現象はほとんど例がない。例えば「ウトータ → ウトタ」「センセー → センセ」のような例は珍しくないが、「アッタ→アタ」のような例はない。
そのためこの「行た」は「行った」の「っ」が抜け落ちたものではなく、「書く:書いた」「泣く:泣いた」など他のカ行5段動詞と同じように、過去には「いく」の過去・完了形も一旦はイ音便を起こして「いいた」となったものの、発音が不安定であったために短母音化が起こって「いた」となり、それが現代にまで残ったものである可能性がある。
単に数字を1から10まで数えるときの言い方であるが、旋律が独特なので紹介する。 音階に直すとこのようになる。
「いちにーさんしー、ごーろくひちはちくーじゅう」
ラソミソラーソー ラーラソラソラソラーミー(最後のミーはミソとも)
隠れん坊で数字を1から10まで数えるときなどに、よくこの旋律が用いられる。
数え歌。「いちにの」は「いちにい」となることもある。
「いちにの」はそのまま「一・二」、「さんまの」で「三(さん)」、「しっぽ」で「四(し)」、「ゴリラの」で「五(ご)」、「むすこ」で「六(むっつ)」、「なっぱ」で「七(なな)」、「はっぱ」で「八(はち)」、「くさった」で「九(く)」、「豆腐」で「十(とお)」を表す。
単なる流行語であった可能性もあるが、昭和50年代に小学生時代を過ごされた方はおそらくご存じであろう。
追補・当サイトの掲示板において、りーさんという方から「昭和58年生まれの自分の周りでも使っていた」という情報が寄せられました。
どうやら平成以降に小学生時代を過ごした方にも通じるようです。
「いちばんに」「真っ先に」という意味。かつて使われた「いちはなだつ」という動詞の連用形+テの形が副詞として残ったもの。
「あの子は家帰ってくると、必ずいちはなだって『おやつちょうだい』言うなあ」
調子に乗ってふざけること。
「そんなとこでいちびってたら、ケガすんで」
全然。まったく。一つも。
後ろに否定語を伴い、「いっこもええことあらへん」などのように使われる。この言葉は普段「一個・二個……」と数えないものに対してでも使える。
「いっこもできてへんやないか」「いっこもええ服あらへん」
みなでタイミングを合わせて何かをするときの掛け声。最後が「せ」ではなく、「で」であることに注意。
「ほな、いっせいのーで、で始めるえ」
東西の通りの一つである「一条通(いちじょうどおり)」のこと。「いちじょう」が訛ったもの。
(※参照⇒「はっちょう【八条】」/「ひっちょう【七条】」)
「行って」に同じ。「行てくる」「行てきた」のように使われる。
補助動詞「~いる」が付くと約まって「行てる」となることもあるが、これは大阪言葉の「いてる(いて+いる=『いる (be)』を二重に重ねた言い方)」とは別語。
「~しなくて」「~しないで」の意味。動詞の未然形につけて「何遍も言わいでも聞こえてる」というふうに使う。
この「いで」というのは、「この恨み、晴らさでおくべきか」などの表現に出てくる「で」が変化したもの。一見すると共通語の「~ないで」の「な」が落ちただけのようにも見えるが、語源はまったく異なる。「~んで」とも言う。
「そんなことも知らいでよう言うわ」「昨日はうかがえませいで失礼しました」
麺のような糸状の蒟蒻。関東で言う「しらたき」に同じ。
強調語の一つ。おそらく「い(助詞「よ」が転じたもの)」と助詞「な」とが組み合わさったもの。
意味・使い方・接続の仕方などは、文法の部「助詞」を参照。
「誰がいな」「どこがいな」「書きいな」「食べいな(※タベーナと発音される)」「読んでいな(※ヨンデーナと発音される)」
「書きいや」のような表現はこの「いな」と「や」の3.とが混ざったもので一種の誤用。
家に帰ること。また命令形「いね」に限っては「この場から立ち去れ」という意味で使われることもある。
古典の教科書に「ナ行変格活用『死ぬ・往ぬ』」というのが出てくるが、あの「往ぬ」がこれである。
「さっさと往んでしまい」「遅なってきたし、ぼちぼち往ぬわ」
単に「いも」と言う時は「サツマイモ」のことを指す。より丁寧に「お芋/○○●」「お芋さん/○○○○●」とも言うが、その場合もやはり「サツマイモ」のことを指す。
子どもが大勢の前で失敗した人を囃すときの歌。一人がこの歌を歌い始めるとだいたい周りも巻き込んだ大合唱となり、失敗した人は余計恥ずかしい思いをする。
ちょっとアクセント符号で表すとわかりにくいかもしれないが、節は、
「いーやーやー、いーやーやー、せーんせーにー、ゆーたーろー」
と言う風に「高-低-高/●○●」を繰り返す。
またこの言葉は変種が多く、私が知っているものだけでも他に「いしゃしゃいしゃしゃ、せんせにゆうたろ」「ゆうたろゆうたろ、せんせにゆうたろ」等がある。
なお音階に直すとこうなる。
「いややいやや、せんせいにいうたろ」
ラソラミレミ ラ ソ ラ ミ レミ
さわること。弄くること。近世語「いろう(弄う)」の転じたもの。
「~ろう」で終わる動詞が「~らう」に転じた例としては他に「ひらう(拾う)」がある。
「割れたビンなんかいろてたら、ケガすんで!」
せっかちなこと。またそのような人。
動詞「いらつ【苛つ】」の連用名詞からか。
「あんた、いらちやなあ」
余計なこと。「要らぬこと」の転。
「要らんことせんと、じっとしとおき(余計なことしないで、じっとしていなさい)」
「魚釣り(さかなつり)」に同じ。
川や海にいる「魚」のことは元々「うお(うを)」と言った。対して「さかな」とは「酒菜」、つまり本来は「お酒のあて」という意味であった。しかし酒のあてとして魚肉がよく使われたことから、いつしか「さかな」が「魚(うお)」の意味も表すようになったという。
この「うおつり」という言葉は、「うお(生きている)」と「さかな(調理済み)」とが区別されていた時代の名残とも言える。
「昨日魚釣りしに、琵琶湖まで行ってきたんや」
なくすこと。失うこと。
「いやあ、気に入ってた時計、どっかうしなえたあ!」
女性の1人称代名詞の1つ。
使用する年代や用法については文法の部「名詞・代名詞」を参照。
「うちとこ」、つまり「うちの家」という意味。ただし父いわく、かなり下品な言葉とのこと。
理解できるけど自分では使わない言葉にとどめておくのがよろしいでしょう。
「うっとこ、昨日新しいビデオ買うたんや」
「鬱陶しい」に同じ。途中の母音が短縮したもの(参照⇒「母音短縮」)。
「梅雨時はじとじとしてうっとしいなあ」
「うるち」のこと。省略形ではない。
東京語の「よ」に当たる助詞。「~で」よりも語感が柔らかく丁寧。使い方や接続の仕方は文法の部「助詞」を参照。
「そうえ/●●●」「あかんえ/●●●●」(※「~で」と異なり、高く付くことに注意)
比叡山(ひえいざん/●○○○○)のこと。
叡山電車の略称・通称。なおこの電車は元々(というてもほんの十数年前まで)京福電車の一部であった。そのためかつては単に「京福」とも呼ばれた。
また更に遡ると、一頃「元田中」駅を挟んで市電との相互乗り入れ運転をしていたこともあるなど、この電車にまつわるエピソードは多い。
(※参照⇒「らんでん【嵐電】」)
「良い(よい)」の訛り。[joi]→[je:]→[e:]と変化したもの(ここからさらに[e:]→[i:]と変化したものが東京語の「いい」)。決して「いい」→「ええ」と訛ったものではない。
「よい」が「ええ」と訛るのは終止・連体形のみで、他の活用形は「ようて」「よかった」と語幹部分は「よ‐」のまま。
またこの「よい」→「ええ」は必ず起こるものでもなく、同じ話者が「よい」「ええ」を併用することも。
右京区中川のように「よい」を「ええ」とは言わぬ地域もあり、そのようなところでは「好い加減」のような連語も「ヨイカケ゚ン」と発音される。
味が濃すぎて、喉が変になりそうなさまを言う。
「このラーメン、ものすごえぐい。こんなんよう食べんわ」
しつこいさま。またくどくどしいさま。胸がつかえそうな気分になること。
「なんちゅうえぞくろしい柄した着物や」
吐き気をもよおすこと。この言葉は古典にも登場し、旧仮名遣いでは「ゑづく」となっている。
つまり元々は「うぇづく」と発音されたわけであり……何というか、「そのまま」という感じの言葉である。
「あー、さっき変なもの食べたせいか、えづいてきた」
当然~である、という意味を強調させるとき使い、「えら~」の「~」には動詞の連用形が入る。
「こんなことしたらセンセおこらはるやろか」「えらおこりやで」
あいにく。折り悪く。
「えんばんとうちのもんは出かけております」
接頭語の「お」+1段動詞「出でる」の連用形「いで」+敬意の助動詞「やす」からなる連語。「ようこそおいでなさいました。」の意。お店の人がお客さんに言う言葉。いらっしゃいませ。
似た表現に「おこしやす」もあり。使い分けについては諸説ある。
お尻。
おいでなさい。「おい(で)な(は)い」の()内が略されたもの。大阪言葉では「おいなはれ」
「お菓子あげるし、おいないやー」
「おおきにありがとう」の略。ありがとう。身内から見知らぬ人まで幅広い相手に使える。
「いや、これ先に買うといてくれたん? おおきに」「(座席を譲ってくれた相手に)おおきに」
「かゆ」に「お」を付けた「お粥」の訛り。より丁寧に「お粥さん/○○○○●」とも言う。
ユ→イ転訛の例。
かまどのこと。しかし今や、かまどのある家そのものが珍しくなったためか、この言葉も廃語寸前。
今の伏見区南部から宇治市(元紀伊郡南部から元久世郡北部)にかけてかつて存在した大池。昭和の始め頃に干拓され、現在は大部分が水田となっている。「おぐらがいけ;●●●●○○」とも。
埋め立てたのではなく干拓(水を排出)しただけなので、大雨などの際には復活するおそれも。
ちょうだい。「おくれなはい」→「おくんなあい」→「おくない」と変化したもの。
上の「おいない」もそうだが、親や祖父母が、子や孫に対して使う場合が多い。
「ちょっとそのお菓子おくない」
たくあんのこと(注・もしかしたらお漬け物全般を指すのかもしれぬ)。
接頭語の「お」+5段動詞「越す」の連用形「こし」+敬意の助動詞「やす」からなる連語。お店の人がお客さんに言う言葉。いらっしゃいませ。
似た表現に「おいでやす」もあり。使い分けについては諸説ある。
お手玉のこと。中井(2002)によれば中京区・下京区にまとまって分布。
「ななこ」「おじゃみ」とも。
「あんたおじゃみ下手やなー」
座布団を丁寧に言ったもの。お座布団/○●○○○(※会話資料には○○○●○もあり)の省略形。
お手玉のこと。中井(2002)によれば比較的新しめの語とのこと。
「ななこ」「おこんめ」とも。
「あんたおじゃみ下手やなー」
「お醤油」の訛り。
「ちょっとそこのおしょゆ、取ってくれへんか」
意味は「ございます」と同じだが、畏まり度はやや落ちる。「どす・ます」と同程度。大阪では「おます」と言う。
用法は文法の部「丁寧語」の「おす」の項を参照。
「今日は天気がよろしおすなあ」「そんなことおへんえ」
「大根」に「お」をつけた「おだいこん」の略。
「おだいのみそ汁、おいしい」
からかうこと。小馬鹿にすること。
「何や、その人をおちょくったような態度は」
お寺の住職。「おしょうさん」が約まったものか。
ちなみにおじさんという意味の「おっさん/●●●●」とはアクセントで区別する。
「ほなおっさんが来やはったら始めます」
幼児語で「お座り」のことで、「おっちんする」のように使う。
「あんまりちょろちょろしたら危ないし、そこでおとなしおっちんしとき」
「落ちた」のことをしばしばこう言う。ただし動詞としての原型は「落ちる(1段)」であって「落つ(5段)」ではない。
同様に、「落ちて」もしばしば「落って」となる。
「何かそこに落ってるで」
あごのこと。
「手塩皿」の丁寧な言い方。「おてし」とも*8。
アクセントは、中井幸比古氏のアクセント資料を見ても、○●○と○○●とのどちらが本来のアクセントであったか判断が難しい。
東日本では「おととい」と言うが、西日本では普通こう言う。類似するものとして「なぬか(西日本)/なのか(東日本)」
この言葉の語源は「彼方(をと)つ日」であるというので、恐らく東日本の「おととい」という言い方は、「おととし」に引かれたものであろう。
おはぎ餅のこと。これは東京でも使われるが、注意すべきは京都において「お萩」は一年中「お萩」であり、東京における「春はぼた餅、秋はお萩」のような季節による言い換えは、まずせぬということ。
言い換えれば、京都では「ぼた餅」という単語そのものがあまり一般的ではないとも言える。
京都では出かける人を見送る時こう言う。類義語に「気ぃつけて」など。
「ほないてきます」「おはようおかえり」
太陽のこと。「おひさま」「おひさん」ではなく、「おひいさん」と「ひ」を伸ばすことに注意。
「おひいさん、照ってきた」
お茶。元はお湯のことも差すが、今日「おぶ」といえばお茶のことを差す場合が多く、お湯のことは「さい(さゆ)」と言う。
「このおぶう、ちょと熱いなあ」
お茶漬けのこと。
「別におぶづけ出したさかいにゆうて、帰ってほしいて思てるわけやないで」
枕を丁寧に言ったもの。「おいた/○●○(イタズラの頭にオを付けたものの省略形)」「おこた/○●○(コタツの頭にオを付けたものの省略形)」などと同じく、名詞の頭に丁寧のオを付けて4拍目以降を省略した言い方。
それぞれ「ご覧」「ご覧なさい」にあたる。「おみ」というのは「お」+「見る」の連用形、つまり「おし」とか「おたべ」などと同じ語構成の言葉。「ない」は「なはい(『なさい』の訛り)」が約まったもの。
「ほらこっち、見とおみ」
余所の家から帰る時に「おやかまっさんどした」という風に使う。「がいがいと騒ぎ立てて、喧しゅうしてすみません」という意味合いの言葉。
おそらく「おやかまし(お喧し)さん」の変化したもの。
意味そのものは「いる」と同じであるが、「おる」には対象を蔑むようなニュアンスが含まれる。そのため敬意を表す助動詞とは組み合わせることができない(おらはる・おらはったのような言い方はしない)。
京都の旧市街地では本動詞として使われることはまずなく、「~しよる(し-おるの訛り)」「~しとる(して-おるの縮約形)」のような補助動詞としてなら使われなくもないという程度。単独での使用頻度の低さから、旧市街地では「おる」を単独で発音すると、基本型化した●●という音調も現れる(参照⇒中井2002)。
「いる」と「おる」との使い分けについては、文法の部「待遇表現~敬語と侮蔑語」の「おる」を参照。
動物や昆虫の「雄(オス)」のこと。
(※参照⇒「めん【雌】」)
「カブトムシのおんとめん(雄と雌)」
「同じ」の訛り。「おなじ」→「おんなじ」→「おんなし」
「これとおんなし包装紙ってまだある?」
「同じ」の訛り。
可愛い。「かわいらしい」の短縮形。
「かいらしいお人形さんやなあ」
近所の人の目につくこと。ご近所の噂になること。
京都で暮らしていて、もっとも怖いのがこの「顔がさすこと」である。
「町内で顔さすようなことせんといて。恥ずかしい……」
「かかし【案山子】」のこと。2拍目は濁音になるのが本来の言い方。
「かかと【踵】」のこと。元は「きびす【踵】(●○○・元は●●○)」がもっとも一般的で、この「かがと【踵】」という言い方がそれに続いた。
におい。香り。
「ええかざが漂うてくんなあ」
里芋の親芋のこと。お正月にお雑煮に入れて食べることはあるが、普段は食べない。
(米を)研ぐごと。
なお地域によっては米を水に浸すことについてもこの言葉を使うらしい。
カツラのこと。2拍目が濁るのが共通語のそれと異なる。
「~であっても」「~であったとしても」という逆接の仮定を表す助詞。
(※参照⇒「そやかて」)
「猫なで声出したかて、あかんというたらあかん」
京都では住所を表すとき交差点を基点とするので、「四条河原町の東南角(ひがしみなみかど)」などという言い方がよくなされる。
この「~角」という言い方をする時は、「東西南北」の順に方角を並べるという暗黙の規則がある。従って「南西角」とは言わず「西南角(にしみなみかど)」と言い、「北東角」ではなく「東北角(ひがしきたかど)」と言う。
「~ってば」「~ったら」で言い表されるようなじれったさや、「~ではないか」という反語的なニュアンスを添える終助詞。使い方や接続の仕方は文法の部「助詞」を参照。
「かなわん/●●○○」が約まったもの。
「あの人、また約束破らはった。かなんわあ」
「かにここ約束に間に合うた」
東京では「蚊に刺される」「蚊に喰われる」と言うが、京都では「蚊に噛まれる」と言う。
理髪師のこと。
京ことばにはこの手の「ゆ」→「い」という変化がよく見られる。
京都の中心部を北から南へ流れる川の名前。
古来「かも」の表記には「鴨」「賀茂」「加茂」など様々なものが併用されてきたが、現代では高野川との合流地点より上流部分を「賀茂川」、下流を「鴨川」とするのが普通。
なお先述の合流地点付近には「かもおおはし」という橋が掛かっているが、これは「加茂大橋」と書き表される。
「~かもしれない」の意。「~かもしれん」に同じ。
「言われてみたら、そんなもんなのかもわからんな」
「ほいでからに/●●●●●●・ほんでからに/●●●●●●・ほでからに/●●●●●(すべてソレデカラニの訛)」という形で、「それから、そして」の意を表す。
順接の接続助詞。「~してからに」の形で、「~して、そして」の意味を表す。
例:「ちゃんと灰汁取りをしてからに、ルーを入れてようかき回します」
逆接の接続助詞。「~してからに」の形で、「~したのに、~であるにもかかわらず」の意味を表す。
例:「中学生にもなってからに、まだお人形さんを抱いてへんとよう寝んのかいな」
終助詞。「~してからに」の形で文を切り、「~して!」というような強調のニュアンスを加える。
例:「また散らかしっぱなしにしてからに」
借りること。京都に限らず、西日本では「借りる」ではなく「借る」が本来の言い方。
数多の古典文献が示す通り、この言葉は「借る」と言うのが、かつての日本語では普通であった。
しかし中世以降、それまでは「かうぃた」と発音されていた「買う」の過去(完了)形を、西日本では「買うた(こうた)」と言うようになったのに対し、東日本では「買った」と言うようになったので、東日本では「買う」と「借る」の過去(完了)形が、ともに「かった」で同音になってしまった。
「買う」と「借る」の過去(完了)形が同音では、商売上においても、人と物を貸し借りする際においても、不都合なことこの上ないので、やむなく東日本では「借った」のことを「借りた」と言いかえることにより、「買った」と言い分けるようになったという。
このような経緯の末、今日のような「西日本の『借る』」対「東日本の『借りる』」という方言対立ができたという。
「あの本ほしいけど買うたら高いし、図書館行って借ってくる」
南北の通りの一つである「河原町通」のこと。
または河原町三条(同通りが三条通と交差する地点)付近から四条河原町(同通りが四条通と交差する地点)付近まで、およびそのあたり周辺の繁華街のこと。単に「河原町へ行く」と言えば後者の意味。
気を回す。勘を働かす。
「そんな勘くってばっかりいたら、疲れるえ」
きなくさい、焦げ臭いさま。
「ん、かんこくさいえ。何か焦げてへんか?」
出かける人を見送る時に言う言葉。類義語に「おはようおかえり」など。
春菊のこと。京都では普通こう言う。「春菊」では運が悪いと通じないことも。
しめさばのこと。「すし」という言葉が入ってはいるが、別にしゃりに乗っていずとも良い。
「このきずし、何か怪しい色してへん!?」
「着せる」に同じ。
なおこの言葉は「他人を自分の傘に入れてあげる」という意味や「布団や毛布をかけてあげる」という意味でも用いる。
(※参照⇒「きる【着る】」)
「かわいそうにこの雨の中、濡れたはるがな。傘を着したげ(着せたげ)」「あの子、また布団はねのけてる。着したげて(着せたげて)」
すまない、申し訳ないという意味。二語に分解して「気が‐術ない(きいが‐ずつない/●●●‐●●○○)」とも。
「先度はきずつないこといたしまして」
「きつうきつう」の短縮形。「とても」や「ものすご」等と同様、強調の副詞として使われる。
尽力すること。頑張ること。
「そんな気張ってべんきょしてたら倒れるで」
渋くてとげとげしい味である様を言う。
たくさん。「ようけ」とも言う。
「また、えろう仰山買うてきたなあ」
京都市内で単に「京都」と言うと意味1(時に意味2)であることが多い。そのため他の都道府県の方に「京都(意味3)にも海はありますよね」と言われると「?」という反応になりがちである。
「京都府」や「京都市」が出来たのは19世紀後半であるのに対して、「京都」という地域名はそれよりずっと前からあったことに注意されたい。
共通語より用法が広く、「帽子を着る」「布団を着る」という言い方もできる。更に昔は、もっと用法が広かったらしい。
考え方としては、「上半身に着けるものなら『着る』、下半身に着けるものなら『穿く』」といったところか。
(※参照⇒「きす【着す】」/「はく【穿く・履く】」)
「甘鯛」のこと。甘鯛と言うことは稀。
「このぐじ、ものすごうおいしいなあ」
「食うた」に同じ。
(※参照⇒「いた【行た】」)
~ごと。~全部。
「このリンゴ、皮ぐち食べられる」
大勢を二組に分ける時の特殊なジャンケン。
かけ声とともに皆一斉にそれぞれジャンケンの「グー」か「パー」かを出し、グーを出した人とパーを出した人とが同数だったら、そのままグーを出した人たち同士・パーを出した人たち同士がそれぞれ組をなす。
具合が悪いこと。おそらく「ぐつ=具合」という意味であろうが、「ぐつ良い」とは言わない。
「なんか話聞いてると、ぐつわるいことになってきたなあ」
「待遇表現~敬語と侮蔑語」を参照。
けったくそとは胸くそのこと。つまり「けったくそわるい」とは「胸くそが悪い」の意味。
「あの人の顔を見るだけで、けったくそ悪うなってくる」
奇妙なさま。不思議なさま。
「何をそんなけったいな顔してんの」「けったいな色した服やなあ」
うらやましい。「けなりい」とも。
古語「異(け)なり」から派生した言葉といい、京都のみならずかなり広い範囲に分布しているという。
「豪華な家を建てはって、けなるいこっちゃ」
カブトムシのオスのこと。メスは「ぼーず」
「俺のげんじの方がおまえのより大きい。ええやろ」
20110501追補:メールにてかぼちゃ大王さんという方から、向日及び左京岡崎でクワガタムシの意味で使われていたという情報をいただきました。
文献を当たってみますと、まず井之口有一・堀井令以知両氏による『京ことば辞典』では「ゲンジ=カブトムシのオス」としています。また中井幸比古氏のアクセント資料でも「ゲンジ=兜虫の雄」として見出しを立てたうえで聞き取り調査が行われ、旧市街の方13人はこの意味でアクセントを回答、京北の方1人は「ゲンジ=クワガタムシ」として回答、他、旧市街の方1人と野洲の方1人が「どちらの意味でも使わず・該当する言葉を知らず」と回答なさっています。
以上のことから旧市街ではカブトムシのオスが本来の意味であると見て良さそうです。
ただ近年はゲンジ=クワガタムシ派も広がりを見せているようで、堀井令以知氏が2006年に出された『京都府ことば辞典』では、カブト・クワガタ併記となっています。ある地域またはある世代を境に「げんじ」の意味が変わってしまっている可能性もありますが、元々は「ゲンジ=大きな角が生えた黒い甲虫」程度の大雑把な意味しかなかった可能性も考えられます。
「けれど」に同じ。「そやけんど」の形でも使う。
がっかりする。脱力する。
「ちょっと心配したさかいにいうて、そんなげんなりしてたらあかんえ」
しあさっての次。「四」の次なので「五」ということらしい。冗談のようだが、いたって真面目な語。
里芋のこと。「里芋」と言うと、京都では通じにくい。
(※参照⇒「かしらいも」)
カ変動詞「来る」の未然形「こ」+意向の助動詞「う」。東京の「こよう(こ+よう)」に相当。多く「~してこう(~してこよう)」の形で使われる。
なお「~して行こう」の省略形は「~して行こ」「~してこ」のように「コー」の部分が短縮化されることが多く、「~してこう」となることはあまりない。仮に同音となった場合でも「~して来う」と「~して(行)こう」とはアクセントが異なるため区別はできる(参考・来う/○●、行こう/●●●)。
区別の例:「持ってこう/○○●○●(持ってこよう)」「持ってこう/○○○●●(持っていこう)」
(※参照⇒文法の部「動詞」の「変格活用」の項)
地味な、質素な。地味といっても上品な地味さのことをいい、悪い意味はない。派手の反対語。
「こらまたずいぶんこうとな着物で」
くすぐったい。
「あー、なんかさっきから鼻がこそばゆうてしゃあない。風邪でも引いたんかな」
「こそばい」に同じ。
こどものこと。丁寧に言う時は「お子たち」「お子さんたち」
「子ども」の「ども」は、元々「ものども」や「きさまども」など卑しめの意味を持つ接尾語「ども」に由来するため、京都ではそのような接尾語の付いた「子ども」という言葉を避けて、「子たち」という伝統がある。
「門で近所のお子たちが遊んだはって、やかましやかましい……」
先の尖ったもので突っつくこと。「つ」が濁らぬことに注意。
「指でこつかんといていな。気色悪い」
「ご馳走」の訛り。
「いや、今日はえらいごっつぉやな」
「ご馳走様」の訛り。
「ごっつぉはんどした」「よろしゅうおあがり」
応仁の乱のこと。京の街は太平洋戦争では殆ど焼けなかった(爆撃そのものはあった。一般的にはあまり知られていぬようだが)ため、「京の街を焦土と化すほどの大戦」と言うと、応仁の乱まで遡ってしまう……という一種の冗談。
毎月の「五日・十日・十五日・二十日・二十五日・三十日」のこと。
この日は集金で道が混むと言われている。
「こんぶ」に同じ。
こむらがえり。「こぶら」とはふくらはぎの古語。
古語辞典ではたいてい「こぶら」のほうで見出しが立っているので、恐らく「こむら」の方が「こぶら」の訛ったもの。
ごみのこと。ちなみに「ゴミ箱」は「ごもく入れ/○○○●○」と言う。
「これは」という意味。「これは→こりゃあ→こら」と変化したもの。同類として「あら」・「そら」などがある。
「こらなかなかええもの見つけてきやはりましたな」
五合(ごごう)のこと。よく「五合炊き(ごんごうたき)」という言い方で用いる。
このまま。
「こんなりにしとこ(このままにしておこう)」
「ゴボウ」の訛り。
いわゆる「はじめの一歩」に同じ。
余談だが、私の住んでいた地域では、「さいしょのだいいーっぽ」と言いつづけている間は何歩でも前に進むことができるという、とても愉快かつ厄介なルールがあった。それゆえに「はじめのいっぽ」より字数の多い「さいしょのだいいーっぽ」のほうが好まれたのかもしれない。
さっき。今し方。
「さいぜんからそう言うてますがな」
順接の助詞。東京語の「~から」に当たる言葉。
最近は旧市街地でも「~やから」「~するから」と東京の「~から」をそのまま使う人が増えてしまったが、かつては「上方の『~さかいに』対江戸の『~から』」と言えば、有名な方言対立であった。
なおこの言葉、近畿周辺だけのものと思われがちだが、実際は「さけ、はかい、はけ、すけ……」などの変種が、滋賀から北陸へ抜けて新潟・秋田・青森にいたるまで、かなりの広範囲に分布している。
語源は不詳。式亭三馬の『浮世風呂』のように「境に」から来ているとする説もあるが、●○○型と●●○型とのアクセント対立を残している兵庫のような地域では、「~さかいに/~●○○○」対「境に/●●○○」という具合にアクセントが一致しない。
「さか‐い」や「さ‐かい」のような複合語に由来する可能性も考えられよう。
「~さかい(に)」の用法や接続の仕方などは文法の部「助詞」を参照。
(※参照⇒「そやさかい(に)」/「~し」)
「これあげるさかい、こっちへおいない」
逆さま。
南へ行くこと。「あがる」の反対語で、「下ル」と記される。
「今出川をちょう下がったとこに住んでます」
「寒い」の訛り。この手の「バ行←→マ行」の交代はよく見られる。
鳥肌のこと。
「うー、寒うてさぶいぼ立ってきたー(“出てきた”とも)」
相槌。「そうか」に同じ。「さようか」の略。時代がかったニュアンスはない。
乱暴な言い方として「さよけ」というのもある。
お皿や鍋に残ったものを全部引き上げ、食べてしまうことを「さらえる」という。
「これ、中途半端に余ってんにゃわ。だれかさらえてしもて」
人にものをあげる時などに「これ、ざんないものどすけど……」という風に使う。
一種の常套句なので、本来の意味や他の使い方があるのかは不明。
順接の助詞。「~さかい」に同じ。
この助詞を順接の意味で用いるのは、関西一円の中でも京都ぐらいのものであるという。共通語化の波を被って個性を失いつつある現代の京都言葉において、これは非常に珍しい。
「あ~あ、壊してしもた。無茶をするしや」
「~する人」の意。サ変動詞「する」の転成名詞から。あまり良い意味合いでは使われぬか。
「ええかっこしい(格好付けたがる人)」「自慢しい」
何か失敗した相手を「私は知らん。関係ないさかいな」と突き放す時、言う言葉。
恐らく「知らぬべい」が訛ったもの。
(※参照⇒「やんぺ」)
「あ~あ、ガラス割ってしもた。ワシ知いらんぺ」
(良い意味で)しっかりしたさま。きちんとしたさま。
「しかつべ(め)らしい」から。
「年の割にしかつい子ぉや」
8月、大文字(8月16日)の1週間後頃に開かれる子どものためのお祭り。本来は8月23~24日とされるが、その直前の土日に繰り上げられて行われることが多い。
うどんの一種。蒲鉾や卵、椎茸や葉っぱものの野菜などを具とする。
「人(ひと/●○)」の訛り。ヒ→シという方向への訛りは京都では稀で、特定の語にのみ現れる。江戸語のように規則的な変化ではなく、同じ話者がヒト・シトを併用することも。
「お人/○○●」「他人様/●○○○」「お人さん/○○○○●」のような形でもヒト・シトが併用される。
主に移動に関係する動詞の連用形に付けて「~する時に」という意味を表す。代表的なところでは「来しな」「行きしな」「帰りしな」「ししな」等。なおこれは短縮されて「行きし」「帰りし」ともなる。
「ほな帰りしなに寄ってくるわ」
意味としては「(パーで・平手で)叩く」だが、「叩く」とは少しニュアンスが異なる。「はたく」と「たたく」の中間ぐらいの強さか。
「べちべちべちべち人のこと、しばきなさんな」
おしまい。終わり。
ちなみに東京で言うところの「しまう」は、京都では「直す」というので意味は衝突しない。
「今日はもうそろそろしまいにしょうな」
お正月の15日までの期間。東京で言う「松の内」に相当するもの。
15日の小豆粥で祝い箸を使い納めとし、京都の正月は終わる。
雨がじゃあじゃあと音を立てて降ること。「ざざ降り」に同じ。
「出かけようと思うた日ぃに限ってじゃじゃ降りや」
「味もしゃしゃりもない」の項参照。
ジャンケンをするときのかけ声は東京で「じゃんけんぽん、あいこでしょ」と言うのに対して、京都では「じゃんけんでほい、あいこで‐ほい/低低中中‐高高」と言う。「ぽん」ではなく「ほい」
ちなみにこれを音階に直すと、
「じゃんけんでほい、あいこでほい」
ラ ソミソラシラ ミ ソソ ラ
となる。
なお「じゃんけん」の部分を訛って「じゃいけん」と言う人も。
「じゅんさいな人」で、「いい加減な人。調子の良いだけの人」というような意味を表す。
ジュンサイとは深泥池(みどろがいけ)などに生えるぬるぬるとした食用草のことで、もとは「(ぬるぬるとしたジュンサイのように)つかみ所のない人」のことを「ジュンサイな」と言ったという。
サ変動詞「する」の未然形「せ」+意向の助動詞「う」からなる「せう」の転じたもの。東京の「しよう(し+よう)」に相当。
「どうしょう(どうしよう)」「次の休みは何しょうかな(何しようかな)」
(※参照⇒文法の部「動詞」の「変格活用」の項)
「塩辛い」の変化したもの。東日本でいう「しょっぱい」にあたる。
「この肉、ものすごしょっからいなあ」
あぐらのこと。あぐらをかくことを「じょろ(を)組む」という。
「女の子が人前でじょろなんか組みなさんな」
「される」に同じ。古語「せられる」の転じたもの。
京都では「こしあんの汁の中にお餅を入れた食べ物」を指す。「お汁粉/○○○●」とも。
粒あんのものは「ぜんざい」という。
今や共通語化したので説明の必要もないと思われるが一応。だるいさま、疲れたさまを言い表す言葉で、「心労」を形容詞化した言葉だと言われている。
「ああしんど」
新聞紙(し)のこと。ただし「しんぶんがみ」と言う時は、読むためのものとしてではなく、物をくるんだり包んだりする用途を念頭に置いていることが多い。
酸っぱい。一見すると短縮語のようだが実はその逆で、「酸っぱい」の方が「酸い」の強調語。
「酸いも甘いも」の「酸い」がこれである。
「このみかん酸いわ」
「粋(いき)」に同じ。
「粋(すい)な人」「粋やな」
冬の漬け物の一つ。「酸茎菜(すぐきな)」という蕪(カブ)の一種を乳酸発酵させたもの。
京都では「粒あんの汁の中にお餅を入れた食べ物」を指す。こしあんのものは「汁粉・お汁粉」という。
さんざん。あれほど。長きにわたって。
「せんど言うといたのに、結局何も聞いてなんだんやな」
こないだ。先日。
「先度はえらいお世話かけました」
ゆっくり、かつ慎重に。
「そこはそうろと歩きなさい」
蕎麦粉から作ったほのかに甘い焼き菓子。花びら型をしていて真ん中に穴が開いている。「ぼうろ」はポルトガル語の "bolo" に由来。
ぼうろの仲間としては「衛生ぼうろ(衛生ボーロ)」というお菓子も存在する。
「そうや/●●○」の約まったもの。これを「せや」と言うのは大阪風の言い方。
「そやなあ(そうだねえ)」
東京語の「だって」に当たる言葉。「~だとしても」。「そうや」の約まった「そや」に助詞「かて」が付いたもの。
(※参照⇒「~かて」)
「そやかて、変なこと言わはるさかい、ついしばいてしもたんや」
東京語の「だけど」に当たる言葉。「そやけれど」「そやけんど」とも言う。「そうや」の約まった「そや」に助詞「けど・けれど・けんど」が付いたもの。
東京語の「だから」に当たる言葉。「そうや」の約まった「そや」に助詞「さかい(に)」が付いたもの。
「そやさかい、やめといたらよかったのに」
東京語の「だから」に当たる言葉。「そやさかい(に)」に同じ。
(※参照⇒「そやさかい(に)」/「~し」)
「そやし、ジッとしときって言うてるのに」
東京語の「だから」に当たる言葉。近代以降の京都では「そやさかい(に)」のほうが優勢。
「それは」という意味。「それは→そりゃあ→そら」と変化したもの。同類として「あら」・「こら」などがある。
「そら、そんなことするほうが無茶やで」
そのまま。
「そんなりでええ(そのままで良い)」
毎年8月16日の20時から行われる「五山の送り火」の別称。
従来はまず20時に「(右)大文字」が点り、20時10分頃に「妙法」、20時15分頃に「舟形」と「左大文字」、20時20分頃に「鳥居」という順番で(東から西へ)点火されていったが、2014年より「妙法」と「舟形」が5分前倒しされ、東から西へ5分間隔で点火されるようになった。
五山送り火があるので、旧市街では各家庭で個別に送り火を行うことはしない。
江戸時代後期から明治初頭頃までの京都の絵図には、今もある五山に加えて二ノ瀬~静原の右上(北東)に「い」という送り火が描かれていることが多い。
この他の山でもかつては送り火が行われていたという伝承もあるが、「い」以外は実在したのかどうかはっきりしていない。
最近は「大文字焼きと言うと京都の人は『焼き物のような言い方せんといて』と怒る」というような話がまことしやかに語られることもあるが、実のところ年配層はあまり気にしているふうはなく、むしろ下(昭和後半以降?)の世代からこの手の主張を聞くことが多い。何かの本かテレビ番組などでそのような主張がされ、それに感化されたものであろうか。
ただ8月16日の行事のことは、特に五山の送り火が見える地域では単に「大文字」と言うのが普通で、「大文字焼き」という言い方にはあまり馴染みがなく、違和感が強いとは言えよう。
意味そのものは共通語と同じだが、「炊く」と「煮る」の境界が微妙に異なっている。
たとえば「こいも(里芋)」や「大根」は、東京では「煮るもの」であるが、京都では「炊くもの」であり、「こいもを炊く」「大根を炊く」と言う。
「このこいも、なんか炊き方が足らんのと違う?」
塩辛いこと。辛みしかしないような味について言う。
「たぬきうどん」の略。京都で「たぬきうどん」といえば、きつねうどんにあんかけを加えたもののことを指す。
「何々してやる」の「てやる」の短縮形。東京語の「~してやる」ほどぞんざいではない。
「先生に言うたろ」
「たずねる」の訛り。
お風呂のこと。
「ちゃいちゃい入って、ぽんぽんしょうな」
「違う」の訛り。[tʃiŋau]→[tʃĩjau]と変化したもの。チからヤに掛けてのあたりがやや鼻音気味に発音される。
終止・連体形「ちやう」と、助動詞「ます」が付いた「ちやいます」以外にはこのカ゚→ヤ変化は現れず、他の形は普通通り「ちこ゚た」「ちか゚わん」のように言う。
世代が下がると2拍に短縮された「ちゃう」という形のほうが多くなる。
「違う」の訛り「ちやう」の短縮形。[tʃiŋau]→[tʃĩjau]→[tʃau]と変化したもの。
「~と違う」の形で、「~ではない」の意味にも使う。
「それはちゃうんとちゃいますかなあ」
「という→ていう→ちゅう」と変化したもの。ただしこれはどちらかというとやや大阪っぽい言い方で、京都では「と」の落ちた「~ゆう」か、「~てゆう」のほうが優勢。
「言われいでもするっちゅうに」
ちょっと。「ちょい/●○」とも言う。
「ちょう面白い」という言葉は、東京では「とても面白い」の下品な言い方だが、京都では「そこそこ面白い」の意味となり、全く逆の意味になる。
「ちょう待っていなー」「あとちょう頑張ったらしまいや」
じゃんけんの「ちょき」のこと。
(社寺への参拝とは無関係に、起床後の)手洗い、歯磨きなどをすること。
「はよ手水使わんと、学校(がっこ)遅れるで」
しゃがみ込む。この言葉は変種が多く、見出しに掲げたものの他にも「ちょちょこぼる」「ちょつくぼる」等がある。
「こんな人通りの多いとこでちょちょこばりなさんな。みっともない」
どっちもどっち、五十歩百歩。
「この絵とこの絵、どっちがうまい?」「ちょぼちょぼやな」
ちり紙(ちりがみ)のこと。新聞紙(がみ)とも。
「ちょっとちり紙2~3枚持ってきて」
調和、釣り合い。多く「つろくせん」の形で互いにバランスが取れていない様や、周りに調和していないことを言う。
語源について牧村史陽氏は『大阪ことば事典』の中で「対禄(禄高が釣合っている意)か」と述べている。
「和室にこんなもん置いたかて、つろくせんの、わかりきってるがな」
東京語の「よ」に当たる助詞。「ぜ」が訛ったもの。語気が強いため、女性(特に年配の)は「~え」のほうを使う。
使い方や接続の仕方は文法の部「助詞」を参照。
動詞の連用音便形に付いて「~していろ」という命令の意味を表す。「~してる」の命令形。即ち助詞「て」の後ろに、「いる」の命令形「いい」が付いた「~ていい」から一つ目の「い」が抜け落ちたもの。
最後の「い」ははっきり言うのではなく、全体で「テー」という具合に「て」の長音として発音されるのが普通。
なお「読みいな」「食べていな」などの「~ていな(テーナ)/●○○」は別語。
「じっとしてい/●○○●●○(じっとしてろ)」
動詞の連用音便形に付いて「~してちょうだいよ」と強くお願いする意味を表す。助詞「て」の後ろに、「いな」が付いたもの。
「テーナ」と発音されるのが普通。
意味・使い方・接続の仕方などは、文法の部「助詞」も参照。
「じっとしていな/●○○●●○○(じっとしてちょうだいよ)」「じっとしてていな/‐●●●○○(じっとしていてちょうだいよ)」
「できる」の訛り。
「なんぼ言われたかてでけんものはでけん」
賀茂川と高野川とが合流する地点の西側一帯を指す地名。河原町通と今出川通とが交差する地点付近。元はその名の通り、この付近が京の町の出口付近であったことから。
時には「出町柳/○○○●○○(駅名)」の略称として使われることも。
京の南北の通りを東から西へ並べた歌。ただし現在では知る人ももはやなく、記録として残されているばかり。私の知る限り、歌詞には以下の二通りがある。
寺(てら)・御幸(ごこ)・麩屋(ふや)・富(とみ)・柳(やな)・堺(さか)、
高倉間(たかくらあい)の、東(ひがし)に車(くるま)、
烏丸(からすま)・両(りょう)が、室(むろ)・衣(ころも)、
新釜西(しんかまにし)、小川(おがわ)・油(あぶら)、
醒(さめ)・葭屋(よしや)、猪熊黒(いのくまくろ)、大宮(おおみや)、
松日暮(まつひぐら)しに、智恵光院(ちえこういん)、
浄福(じょうふく)・千本(せんぼん)、はては西陣(にしじん)
テラ・ゴコ・フヤ・トミ・ヤナ・サカ・タカ
(寺町通・御幸通・麩屋町通・富小路通・柳馬場通・境町通・高倉通)
アイノ・ヒガシに・クルマ・カラスマ
(間之町通・東洞院通・車屋町通・烏丸通)
リョウ・ムロ・コロ・シン・カマ・ニシ・オガワ
(両替町通・室町通・衣棚道・新町通・釜座通・西洞院通・小川通)
アブラ・サメ・ホリ・ヨシヤ・イノ
(油小路通・醒ヶ井通・堀川通・葭屋町通・猪熊通)
クロ・オオミヤ・マツ・ヒグラシに・チエコウイン
黒門通・大宮通・松屋町通・日暮通・智恵光院通
ジョウフク・センボン・はてはニシジン
浄福寺通・千本通・西陣通(ママ)
いずれも旋律は不詳。
某銀行がCMで流していた歌では、このどちらとも異なる歌詞が使われている。おそらく「まるたけえべす」の節にあわせるための措置なのであろうが、それにしても歌詞の最後が「さては西陣」となっていたのは不可解である。あるいは「はては」が「(町の)果ては」であることに気づかなかったか。「京の旧市街地」も参照。
(※参照⇒「まるたけえべす」)
逆さま。入れ替わっていること。
「あれ、いつの間にかスリッパがてれこになってる」
揚げ玉のこと。「天ぷらの滓」を約めて「天滓」
同志社大学の学生さんのこと。
共通語の「です」にあたる助動詞。「~で‐おす」が約まったもの。
舞妓さんが使っている言葉というイメージが強いためか、女言葉や舞妓言葉と思われがちだが、元々は老若男女問わず広く用いられていたもの。
用法は文法の部「丁寧語」の「どす」の項を参照。
どーんと突く。殴りかかる。
「いったいなあ。いきなりなにどついてくんにゃ」
「べったこ」に強調の「ど」が付き、さらに省略されたもの。
「いや、僕がどべかいな」
ぬか漬けのこと。どぶ漬け。
「灯す(ともす)」に同じ。
「とぼった、とぼった、大文字(さん)がとぼった」
「灯る(ともる)」に同じ。
「どれにしょう」ではなく「しよう」、そしてアクセントが完全な東京式であることからいっても、明らかに東京(もしくはその近郊)発祥の遊びであろうが、これに続く言い方が他の地方と異なっているようなので記しておく。
京都では「いうとおり」のあと、「プッとこいてプッとこいてプップップッ」と続くことが多い。
この「こく」というのは、「嘘をこく」などという時の「こく」で、即ち「プッとこく」とはおそらく「プッと吹き出す」という意味。
いわゆる「けいどろ/どろけい」のこと。
鈍くさいの鈍。「鈍なことをする」という風に使う。
「鈍なことしまして、えらい申し訳ございません」
ドジなさま、にぶいさま。
「あんなとこでコケるなんて、どんくさいやっちゃなあ」
突き当たりのこと。「どーんと行った突き当たり」から来たらしい。冗談のような話ではあるが、言葉そのものはいたって普通に使われる。
「あこのどんつきの家、今度取り壊すんやて」
「なさい→なはい→ない」と変化したもの。単独で使われることはまずなく、「おいない」・「おくない」・「おみない」の形で使われることが多い。
しまうこと。
「はい、使うたおもちゃ、ないないしょうな」
東京でいうところの「ビニール袋」に同じ。
共通語同様「修理する」という意味もあるが、「しまう・かたづける」という意味もあり、日常では後者の意味で使われることも多い。
そのため京都人に、修理を依頼するつもりで「直しといて」と言うと、そのままどこかへ片づけられてしまう可能性大なのでご注意を。
「この掃除機、邪魔やしちゃんと直しとして」「借ったら返す! 使こたら直す!」
「~なさるな」の転。動詞の連用形につけ「食べなさんな」「言いなさんな」のように使い、丁寧な禁止を表す。ただし敬意はないため目上の人に対しては使えない。
訛って「~なはんな」となることも。
「要らんことしなさんな」
「撫でる」の訛り。
江戸時代の一時期、「ザ行」と「ダ行」との区別が曖昧になったらしく、この手のザ行ダ行混同の痕跡が現代においてもたまに見られる。
(※参照⇒「のぞ」)
「ちょっと、背中をなぜてくれへんか」
これも東西方言で対立する語。東日本では「なのか」と言われるが、西日本では「なぬか」と言う。類語に「おとつい(西)/おととい(東)」など。
私見だが、古い文献ではもっぽら「なぬか」の方が使われているので、「なのか」という言い方は、「七(な)の日(か)」と誤って解釈されたものであろう。
身なりのこと。
「そんなアホみたいななりして、近所歩かんといて」
話題を切り出す時や切り替える時に、「何どすなあ/○○○○●○」「何どすえ/○○○○●」「何どしたいな/○○●○○○○」のように使われる。「ほら、あれですよ」という時の「あれ」に近い用法。
「~なの」の訛り。性別問わず使われる。
言い切りの意味で使われることは稀で、たいてい質問文として、語尾を上げながら発音される。
「そうなん?」「本真なん?」
否定の助動詞「ん・ぬ」の過去・完了の形。動詞の未然形に付き、「~しなかった」という意味を表す。
上方語のみならず、かつては江戸語でも使われていた。しかしそれだけ一般的であったにもかかわらず語源は謎で、いまだこれぞという有力な仮説すらない。
(※参照⇒文法の部「否定形」)
「今日は用事がいっこも片付かなんだなあ」
「なぜか」に同じ。
「なんでか知らんけど、ここから水が漏るにゃわ」
においを嗅ぐこと。恐らく「匂う」と「嗅ぐ」の合成語。
「くんくんくんくん何でもにおぎなさんな」
東西の通りを西へ行くこと。また交差点を西に折れたところのこと。「西入ル」と記す。対義語は「東入る」
「錦小路/●●●○○○」の略。京の台所ともいわれる市場で有名。もっとも昨今では観光客向けの店が増えすぎて、もはや地元民の行く場所ではなくなりつつあるとも。
ゆで卵のこと。『京ことば辞典』によれば、「煮抜く」から来ているという。
助詞「の」+助動詞「や」からなる「のや」の約まった形。大阪方言の「ねや」に相当。
「する」のように「る」で終わる動詞に続く時は「る」が撥音化(ンになること)して、「すんにゃ」のようにも言う。
詳しい用法については文法の部「断定の『や』『にゃ』」の「『のや』『にゃ』『ね・ねえ』」を参照。
(※参照⇒「ね」)
「あの池には大きい鯉が住んでんにゃで(『住んでるにゃで』の『る』が撥音化したもの)」
互いににらみ合い、先に笑った方が負けになるという遊び。にらめっこのこと。
助詞「の」+助詞「え」からなる「のえ」の転。または助詞「の」+助動詞「や」からなる「のや」の約まった形。大阪方言の「ねん」に相当。長い「ねえ」となることも。
「ある」のように「る」で終わる動詞に続く時は「る」が撥音化(ンになること)して、「あんね・あんねえ」のように言うことが多い。
「な」「わ」などの助詞を後ろに続けて「~ねな(~のやな)」「~ねわ(~のやわ)」のように言うこともあるが、どちらかというとこれらの助詞は「にゃ」に付けて「にゃな」「にゃわ」のように言うほうが好まれる。
詳しい用法については文法の部「断定の『や』『にゃ』」の「『のや』『にゃ』『ね・ねえ』」を参照。
(※参照⇒「にゃ」)
「明日5時起きやね(『5時起きなんだ』の意)」「今度旅行すんね」
側、傍ら、近く、近所、という意味。
「もう、人のねき来て大きな声出さんといて」「今度うちのねきにコンビニできてなあ」
「なめる」という意味。「飴をねぶらす」という表現でよく用いられる。
「歩きながら飴ねぶってたら、のどにつまんで」
「眠る」という言葉は、京都ではやや文章語的な響きがあり、日常ではこの「寝る」が「眠る」の代わりによく使われる。
「あの子、よう寝てるわ」
「なくなる」のウ音便形。なくなる。
「ない」の連用形「のう(なく)」+5段動詞「なる」
東京で言う「退く(どく)」に同じ。京では「のく」のほうが普通で、「どく」とはまず言わぬ。
「ちょっとそこ退いて(のいて)くれへんか」
チビチビと長く食べていられるものを「のじがある」のように言い、パクパクと食べてしまってすぐなくなってしまうようなものは「のじがない」のように言う。
「のどす(助詞ノ+助動詞ドス)」の省略形。過去形として「のした」という言い方があるのかは不明。
「これをどうすんのすか」
「のど」のこと。
市内にはどっちがどっちの訛なのか区別がついていぬ人が結構いるようで、耳鼻咽喉科の看板にもたまに「みみ・はな・のぞ」と書かれていることがある。
(※参照⇒「なぜる」)
「うう、風邪引いてのぞが痛いー」
東京では「パーマをかける」と言うが、近畿では「当てる」と言う。
それぞれ「~さかい」「~さかいに」の訛り。
この言葉は腰から下に着用するものに用いるのが普通だが、まれに腰から上に着用するものにもこの言葉を用いる人がいる。「手袋をはく」等。
但し好ましくない用法なので、ご自身では使われぬようご注意を。
(※参照⇒「きる【着る】」)
すばしっこい。頭の回転の速さについても言う。
「今、声がした思たら、もういやへん。ホンマにはしこい子ぉやわ」
台所のこと。
徒競走、かけっこのこと。
「運動会の中で走りがいちばん苦手やわ」
盗むこと。
「人のもんパチったらあかん」
汚いさま。
「ほら、そんなとこ裸足で歩いたらばっちいえ」「ああ、ばっち」
東西の通りの一つである「八条通(はちじょうどおり)」のこと。「はちじょう」が訛ったもの。
(※参照⇒「いっちょう【一条】」/「ひっちょう【七条】」)
大便のこと。「猫ばば」の「ばば」がこれ。
話は逸れるが、この言葉と同音になるのを避けるためか、京都では地名や人名の「馬場」を「ばんば/○●○」と読むことが多い。
「ちらし寿司」のこと。
「やっぱりおばあちゃんの作るバラ寿司はいちばんやわ」
敬意を表す助動詞。語幹が1拍の動詞に付くときは「やはる」とも。
詳しくは文法の部の「待遇表現~敬語と侮蔑語」を参照。
人名などの後に添える接尾語「~さん」の訛り。サン→ハンという変化は義務的なものではなく、同じ話者が同じ人や物を呼ぶときでも「~さん」になったり「~はん」になったりすることもある。
しばしば「サン→ハンとなるのはアやオなど広い母音の後ろだけ」とも言われるが、年配層の会話資料には「仲居はん」「お客はん」というふうに狭い母音イやウの後ろに現れる例も見られる。
おおむね次のような傾向があると言えよう。
上品な華やかさ、明るさを表現する言葉。
元々「華(花)」を語源とする言葉であるという。
「いや、その服えらいはんなりしててええなあ」
東西の通りを東へ行くこと。また交差点を東に折れたところのこと。「東入ル」と記す。対義語は「西入る」
「東大路通」の別名。通りの名前としては「東大路通」と表記されていることが多いが、交差点やバス停(さらには昔の電停)の名前としては「東山○○」と書かれていることが多い。地元民には「東山通」のほうがなじみ深い。
「敷く(しく)」の訛り。シ→ヒ転訛の代表的な例。
「お布団ここにひいとくえ」
「七」の訛り。または「質」の訛り。
特に「七」は、京都では「ひち」と発音されることのほうが多い。
東西の通りの一つである「七条通(しちじょうどおり)」のこと。「ひちじょう」とも。「しちじょう」→「ひちじょう」→「ひっちょう」と訛ったもの。
京都の「○条」はすべて音読みするのが原則(イチ・ニ・サン・シ・ゴ・ロク・シチ・ハチ・ク)。
市バスは「七条」を「ななじょう」と呼んでいるが、これは恐らく車内でアナウンスする時に「いちじょう」との聞き違いを防ぐために市バスが独自の判断で行っているもの(京阪電車は「一条駅」がなく聞き違える恐れがないためか、普通に「しちじょう」と呼んでいる)。理由はどうあれ市の組織が地名の読みを勝手に変えるというのはいかがなものか。
「シチ」を「ナナ」に読み替えるというのは、日本語に精通していないと意味不明なので、外国人観光客には市バスの言う Nanajō が Shichijō のことであるとは気づかれず別の場所と思われるなど無用な混乱を招いてしまっている可能性も考えられる。
いずれにせよ市バスの呼び方の真似はなさらぬよう。
(※参照⇒「いっちょう【一条】」/「はっちょう【八条】」)
くっつくこと。
「何か背中に引っ付いてんで」
ビクビクすること。怖じ気付くこと。やや品位に欠ける感じあり。
「なにをびびってんにゃ(なにをビクビクしているんだ)」
ほんのまぐれで事がうまくいくこと。
「ようあの試験受かったなあ」「拍子のひょこたんや」
将棋の歩(ふ)のこと。
「そんなにひょこを粗末にしてたら、勝てんで」
「拾う」の訛り。
「はらう→はろうた」「ならう→なろうた」等からの類推で、過去形「ひろうた」から誤った現在形「ひらう」を導き出したものか。
元々「~ろう」で終わる動詞が「~らう」に転じた例としては他に「いらう(弄う)」がある。
「この時間、タクシーひらうのは大変やで」
がんもどきのこと。ポルトガル語の "filhos" から来た言葉という。
この語は変種が多く、他にも「ひりゅうす・ひろうす」など。
助動詞「へん」に同じ。直前が「いの段」で終わるとき、「へん」は「ひん」になる。
(※参照⇒「~へん」)
「目覚ましが鳴っても全然起きひん」
「ページ」の訛り。
「×」という印のこと。「○」の対義語。京都で「バツ」と言えば普通「罰」の意味。
「これから言うことに、丸かペケかで答えてください」
イワシの糠漬けのこと。サバのことも。
ご飯と非常によく合います。
「べべ」の項参照。
「~もへっちゃくりも」の形で用いる。「~もへったくれ」に同じ。
(他人の取り分を)かすめ取ること。上前をはねること。「へそる」とも。
また桂のアラQ様という方からお寄せいただいたお話によると、「炊飯器の蓋や釜の底についたご飯粒をきれいに取ること」という意味もあるそうです。なお舞鶴ご出身の奥様は「へしる」と仰るそうです*1。
順番が最後になることを「べべになる」と言う。類義語に「べべた」・「べったこ」など。
「いーや、また走りでべべになった」
「べべ」の項参照。
否定の助動詞。語幹が“いの段”で終わる動詞に付くときは「ひん」となる。また、語幹が1拍しかない動詞に付くときは「やへん」とも。
詳しくは文法の部「否定形」を参照。
拗ねること。ヤキモキすること。
「それで」が「ソレデ→ホレデ→ホンデ→ホイデ」と訛ったもの。「ほんで」「ほで」とも。
「ほいで、明日は何時に起きるの?」
「ほいで」に助詞「から」が付いたもの。「そうしてから」「それから」という意味。さらに助詞「に」が付いて「ほいでからに/●●●●●●」とも。
類語として「ほんでから(に)」「ほでから(に)」などがある。
「ここをこうして、ほいでから次はここをこう」
カブトムシのメスのこと。なおこの意味に限ってアクセントは●●●型であるとする書物もある。
カブトムシのオスは「げんじ」と言う。
「ぼうずって、ゴキブリみたいであんまり……」
「方言」に同じ。
捨てる。
「走りのごもく、ほかしといて」
「そして」の訛り。これに短縮化が加わると「ほて」となる。
「言う」の卑語。
「さっきから何ぶつぶつほざいてんにゃ」
たわむれること。
ゴキブリのこと。「御器(ごき)かぶり」の転。「御器」とはお椀のこと、「かぶり」は囓ること(「かぶりつく」の「かぶる」)。
「あぶらむし」とも言う。
ぐったりする。(一仕事終えて)疲れる。
「ほっと一息つく、くつろぐ」の意味で使うのは京言葉としては誤用。おそらく「ホッとする」という表現と語感が似ているせいで混同されたもの*7。
「ああ、ほっこりした(ああ、しんど。ああ、疲れた)」
「ほして」が約まったもの。「そして」に同じ。
「ほんで」が約まったもの。
「ほんでから」が約まったもの。「ほでからに/●●●●●」とも。
「ほんなら」が約まったもの。「それなら」「それでは」に同じ。
「ほな、また(別れ際の挨拶)」
東京の「ダルマさんが転んだ」にあたる言葉。「ぼんさん」とは「坊さん」のこと。最後の「こいた」の部分は「こいだ」となることもある。
この言葉は「ダルマさん」同様10文字だが、これの20文字バージョンとして「ぼんさんが屁をこいたら、においだらくさかった」というのもある。なお「においだら」については「におぐ」の項参照。
「それで」が「ソレデ→ホレデ→ホンデ」と訛ったもの。「ほいで」「ほで」とも。
「ほんで、次はどこ向かうん?」
「ほんで」に助詞「から」が付いたもの。「そうしてから」「それから」という意味。さらに助詞「に」が付いて「ほんでからに/●●●●●●」とも。
類語として「ほいでから(に)」「ほでから(に)」などがある。
「それなら」が「ソレナラ→ホレナラ→ホンナラ」と訛ったもの。これが約まると「ほな」になる。
「ほんならそろそろ行きましょか」
以下のような意味の幼児語。
「本当」に同じ。
「あの人の言うてることって、本真のこと一割もあらへんしなあ」
「本物」に同じ。
「これって本真もんのダイヤなん?」
真っ赤っか。「真っ黒け」や「真っ白け」と韻を踏んだ言い方。
「夕日で空が真っ赤いけや」
こくがあり、風味深い味のこと。
NHKの某アニメの影響か、全国的に「ゆったりする・くつろぐ・のんびりする」というような意味で使われることが多くなってしまったが、本来は味覚について述べる言葉。
「なかなかまったりした上品なお味どすな」
言葉そのものは共通語のそれと同じだが、「まつり」という言葉から想起されるイメージが若干異なる。
おそらくたいていの地域の方は、「祭」といえば、「大勢で御輿を担ぎ、威勢よく町内を巡り歩く」といった類の、躍動感あるイメージを思い浮かべるところであろうが、京都の「祭」は、「平安貴族の格好をした人たちが笛や太鼓を打ちならしながら、ゆっくりゆっくりと街中を練り歩く」という、きわめて静的なイメージが強い。
東西の通りの名前。平安京の五条通に相当する。
弁償すること。「まどす」に同じ。
「あんだが壊したおもちゃ、ちゃんとまどてもらおか」
弁償すること。「まどう」に同じ。
「真似しい」が約まったもの。何かにかぶれていることや、そういう人のことを言う。
なお囃し立てる時は「まねしまんざい/○●○●●●●」とも言う。
「何それ。あの人のまねしやないか。まねしまんざい!」
京の東西の通りを北から南へ並べた有名な童歌。「まるたけえびす」とも。
「まるたけえべすに・おしおいけ・あねさんろっかく・たこにしき・しあやぶったか・まつまんごじょう」という。
これは北から順に「丸太町通・竹屋町通・夷川通・二条通・押小路通・御池通・姉小路通・三条通・六角通・蛸薬師通・錦小路通・四条通・綾小路通・仏光寺通・高辻通・松原通・万寿寺通・五条通」の頭文字を取ったもの。
かつてはこれに対して、南北の通りを歌にしたものもあったという。これは「てらごこふやとみ」の項を参照。
1990年代の終わり頃から、五条より南の通りを付け加えた「まるたけえべす」が流布するようになったが、これには次のような不審点がある。
おそらく五条より南の歌詞は後に付け足されたものであろう。
筋肉が疲労してこわばり痛むこと。筋肉痛になること。
「昨日久しぶりにスポーツしたせいか、今日は身ぃいってかなん」
どらやきのこと。
和菓子の名。ういろうに粒あんを錬り込んだような感じのもの。その名の通り六月のお菓子。
順番を決める時の特殊なジャンケン。「右回り」から。皆で輪になり、この言葉を唱えながら各自グー・パー・チョキを思い思いに出し、独りだけ異なるものを出した人を起点にして、そこから時計回りに順序を割り振る。
「みんぎり」の「ん」はおそらく「ミキ゚ [miŋi] →ミンキ゚ [miŋŋi]」という変化であろうが、「り」がどこから来たのかは不明。「右」を意味する近世語「みぎり」とは無関係か。
「ほなみんぎりまわりで順番きめよか」
「あらけない」と同義。
「むずかしい」に同じ。「つ」は濁らない。
「またむつかしいこと言わはるなあ」
「むずかる」に同じ。「つ」は濁らない。
麦粒腫。東京で言う「ものもらい」のこと。「目」+「イボ」という語構成であろうが、既に語源意識は薄れていて「メーボ/●○○」と発音されることが多い。大阪では「めばちこ」
なかなか寝付かぬさま。また、なかなか寝ようとせぬことについても言う。
「子どものくせに目が固いやっちゃ」
動物や昆虫の「雌(メス)」のこと。
(※参照⇒「おん【雄】」)
「もらう」の過去・完了形「もろうた(モロータと発音)」のローが短母音化した「もろた」の訛ったもの。東京で言うところの「もらった」に相当する。
「おばあちゃんにこれもうた」
「舞う」の過去・完了形。
「この部屋、無茶苦茶ほこりが舞うてる(モーテルと発音)がな。掃除せんとあかんわ」
補助動詞「~しまう」の過去・完了形「~しもうた」の省略形。「~してしもうた」という言い方は、この「~してもうた」という略し方の他に「~してしもた」という略し方もされる。戦前生まれ世代の会話資料には後者しか出てこないことから、「~してまう」「~してもうた」のような「し」を省略する言い方は比較的新しいか、あるいは大阪言葉から入ってきた可能性あり。
牧村史陽氏の『大阪ことば事典』によると、大阪言葉では「~してもうた」をさらに縮めて「~してもた」と言うことも出来るようだが、京都言葉では不可。「しもうた」の部分が3拍未満になるような略し方はしない。
垢抜けせぬさま。
「なんかあんた、今日のかっこもっさいなあ」
動詞の連用形に付けて「何々しながら」の意味を表す。
「食べもってうろうろしたらあかんえ」
断定の助動詞。共通語の「だ」にあたるもの。
使い方はおおむね「だ」と同じだが、1) 「しますんや」のように丁寧の助動詞にも「や」は付けられる点や、2) 「や」は普通語頭に立たず、「やけど」「やったら」のように助動詞「や」から文を始めることができない(それぞれ「そ(う)やけど」「そ(う)やったら」のように「そ(う)」を前に置く)点などの違いもある。
詳細な用法は文法の部「断定の『や』『にゃ』を参照。
「~では」が、「~では」→「~じゃあ」→「~じゃ」→「~や」と変化したもの。
ただしこの意味の「や」は、後ろに「ない」または「ない」と同じ意味の言葉(あらへん・おへん等)が続くときのみ使われる(それ以外の時は「じゃ」)。
「それやない」「それやあらへん」「それやおへん」
動詞の連用形または助詞「て」につく助詞の一つ。語調をやわらげる働きをする。
「時計鳴ってるえ。はよ起きや(早く起きなさいよ)」「これ、見とおいてや(見ておいてね)」
(※参照⇒文法の部「助詞」)
お灸のこと。
「あんまり悪さばっかりしてたら、やいと据えるえ」
無茶して人に迷惑かけること。
「ほんまにいつまでたっても、やくたいなお人やわ」
接頭辞「お」+動詞連用形+この「やす」で敬意を表す。
用法などの詳細は文法の部「待遇表現~敬語と侮蔑語」を参照。
「ごめんやす。おいやすか[お+『いる』の連用形『い』+やす](いらっしゃいますか)?」「どうぞ、見しとおくれやす(見して+おくれやす)」
安い値段で。「安く+で」の音便形。
「余りもんを安うで買うてきた」
下品な、品のないさま。
「あの人は、なんちゅうやすけないなりしたはるんや」
めかし込んだ人のこと。動詞形は「やつす」
助動詞「やす」に助詞「や」が付いたもの。「~しとくれやっしゃ」という形で使われることが多い。
用法などの詳細は文法の部「待遇表現~敬語と侮蔑語」を参照。
「お食べやっしゃ(お食べなさいませ、お食べ遊ばせ)」「気いつけとおくれやっしゃ[気、つけて+おくれやっしゃ](気を付けてくださいね)」
めかし込むこと。
(※参照⇒「やつし」)
「そんなにやつしてどっかええとこでも行くん?」
「~なの」の意味。「~なん」とは異なり、言い切り・質問どちらにも使われる。
「そやの?」「これやっていうたらこれやの!」
助動詞「はる」の、語幹が1拍しかない動詞に付くときの形。
(※参照⇒「~はる」)
「寝やはる」「出やはる」「こっちへ来やはる(きやはる)」
助動詞「へん」の、語幹が1拍しかない動詞に付くときの形の一つ。
(※参照⇒「~へん」)
「見やへん」「出やへん」「いやへん」
将棋の香車のこと。前方にしか動けない代わりに遠くの敵でもまっすぐ槍のように射抜くという、その動きからこう言うらしい。
「いやっ、角の頭にやり打たれた!?」
それぞれ「~やない」「~やないか」の短縮形。「~じゃない?」という意味。反語的感嘆を表現するときに使われる。
「なかなか絵ぇ上手やん」「ものすごうおいしいやん」
大勢で遊んでいて、そこから抜ける時に言う言葉。こういう場合、最初に誰かが「一やんぺ(いちやんぺ)」と言うて抜けると、だいたい誰かが「二やんぺ(にいやんぺ)」「三やんぺ」と続けて、その遊びはお開きになる。
おそらく「止むべい」の訛り。
(※参照⇒「知いらんぺ」)
「やんぺ! これ遊んでてもあんまり面白ない」
「言う(いう)」に同じ。「言う(ユー)・言うた(ユータ)」に引かれて他の活用形も、「ユワン・ユワヘン・ユワレル・ユワス・ユエ」のように語幹が変化したもの。
初夏から夏にかけて、鴨川縁にある飲食店が川辺に張り出す縁側部分のこと。ここでご飯を食べるのは一種のステイタスとなる。
たくさん。「仰山」に同じ。
「そんなようけ食べたらお腹壊すえ」
たくさん。「仰山」の訛ったものか。もしくは「仰山」が「ようけ」の影響で変化したものか。
「ようさんの人が集まったはる」
多く「よーせーてー」の形で使い、「(遊びの)仲間に入れて」の意味。
しばしば「て」のところで音程が上がるため、話者によっては音調が○○●型動詞相当になっていることも。
順接の助詞。東京語の「~から」に当たる言葉。「~さかい(に)」に同じ。
近世上方語では「~さかい(に)」より優勢であったが、近代以降の京ことばとしては「~さかい(に)」のほうが優勢。
用法や接続の仕方などは文法の部「助詞」を参照。
「そやよってに(だから)」「午後から天気が崩れるて予報が出ていますよってに、傘を持っとおいきやす」
選び取った後に残るくず。残りかす。
補助動詞「おる」が、動詞の連用形に直接付いた時の形の一つ。動詞の連用形は /i/ か /e/ で終わるため、それを受けて「おる」の語頭がヤ行化したもの。。
動詞に侮蔑的なニュアンスを付加するのに使われ、「しよる(しおる)」「来よる(来おる)」「言いよる(言いおる)」「投げよる(投げおる)」のように言う。「いる(居る)」に付けて「いよる」ということも出来る。
(※参照⇒「待遇表現~敬語と侮蔑語」)
食後の「ごっつぉはん(ご馳走様)」に対する返答の言葉。おそらく「よろしゅうお上がりやした」がつづまったもの。
「ごっつぉはん」「はい。よろしゅうお上がり」
京福電車嵐山線の略称・通称。
(※参照⇒「えいでん【叡電】」)
立命館大学の学生さんのこと。
「路地(ろじ)」のこと。最初の「ろ」を引いて、2拍ではなしに3拍で言う。
無茶なこと。または台無しになること。
「そんなことしたら、せっかくの苦労がわやになるがな」
「わや」の意味を強めたもの。「無茶苦茶」に同じ。
「あー、水こぼしてせっかくの絵ぇが、わやくちゃになってもうたあ」
準体言「の」の訛り。
「そうなん(そうなの)」「するんや(するのや)」「書いたん(書いたの=書いたもの)」
否定の助動詞「ぬ」の変化したもの。
(※参照⇒文法の部「否定形」)
「知らん」「この紙飛行機、あんまり飛ばんなあ」
「~いで」の別の形。
「~せずに」という意味。動詞の未然形につけて「何もせんと(=何もしないで)ゴロゴロしてばっかり」というふうに使う。「~んと[2]」とはアクセントの違いで区別される。
おそらく近世語「~ずと」が転じたもの(上方語ではズ/ヅがンに訛ることがある。「たんねる【訪ねる・尋ねる】」を参照)。
(※参照⇒アクセントの部「動詞の活用形アクセント一覧」)
「要らんこと言わんんとおきや」
否定助動詞「ん(ぬ)」に助詞「と」がついたもの。「~しないと」という意味。動詞の未然形につけて「じっとしとおかんとあかんえ」というふうに使う。
「~んと[1]」とはアクセントの違いで区別される。
「~んと[1]」に補助動詞「おく」がついたもの。「~しないでおく」という意味。
「~ずとおく(近世形)」→「~んとおく」
「やっぱり言わんとおこ(言わないでおこう)」
「~んとおく」の短縮形。
「~ずとおく(近世形)」→「~んとおく」→「~んとく」
「もうこんなことせんときや(しないでおきなさいよ)」
「馬(うま)」の訛り。
「梅(うめ)」の訛り。
思いつくたびごとに、ぼちぼち追加するという方針で作っています。