2-1. え (e)・𛀁 (je) 区分衚・和語篇→りェブフォント版・通垞版

目次

※𛀁𛀀の2文字が正垞に衚瀺されおいないようでしたら、こちらをクリックなさっおください。

凡䟋

語圙抂説

 䞀芋するず䞋の衚にはそれなりの語数があるようですが、実のずころ、え𛀁の別が明らかで、なおか぀耇合語でないものに絞っおみたすず、これぐらいしか残りたせん。

ア行のえ [e] 由来であるもの
  • ア行䞋二段動詞の掻甚圢および転成名詞
  • え「可愛」の意の接頭蟞・え嘆きの声・え可胜の意味の副詞・荏・抎え・えのき・えい魚の・棧・葡萄えび・鰕・倷えびす・蝊倷えみし・えめむし・えやみ・遞ぶ・苗はえ・鵯ひえずり
ダ行の𛀁 [je] 由来であるもの
  • ダ行䞋二段動詞や助動詞ナ・ラナの掻甚圢および転成名詞
  • 机・鵺・鰷は𛀁・皗・比叡・笛・江・柄・兄𛀁・枝𛀁・𛀁だ・良し吉し善し𛀁し・𛀁ひ垯か結いの東詞

 蚀い換えたすず、本衚でえ𛀁の別が明らかずされおいる語は、䞊の基本語圙そのもの、たたはこれらを構成芁玠ずする耇合語がほずんどです。
 耇合語の䞭には、今日では耇合語であるこず自䜓が分かりづらくなっおいるものもありたす。䟋えば「かの𛀁【庚】」「きの𛀁【甲】」「぀ちの𛀁【戊】」「ひの𛀁【䞙】」「みづの𛀁【壬】」の類は、元々「の兄𛀁」ずいう意味ですので、すべおダ行の𛀁盞圓ずいうこずになりたす。

え𛀁区分衚・和語篇

ア行䞋二段動詞の掻甚圢未然・連甚・呜什 及び 転成名詞*7,*15

證
「安芋児埗たり*7」「埗難き*7」「あり埗む*7」「数ぞえず*7」「埗おし*15」等。「埗る」ずその耇合語のみ。證補は副詞の「え」もここに含めおいる。

ダ行䞋二段動詞の掻甚圢未然・連甚・呜什 及び 転成名詞*1,*2,*4,*5,*7,*8,*9,*11,*12,*13,*15

證・衣・衣増・衣補
「肖𛀁あ𛀁*4」「零𛀁あ𛀁*7」「脅𛀁*8」「思ほ𛀁*7,*12」「聞こ𛀁*2,*4,*5,*7,*9,*12」「消𛀁*15」「越𛀁く𛀁*7」「越𛀁こ𛀁*4,*7」「栄𛀁さか𛀁*2,*7,*9,*11」「萎𛀁しな𛀁*7」「絶𛀁*1,*7,*15」「生𛀁*7」「立ち乱𛀁*7」「芋𛀁*2,*4,*7,*8,*12」「萌𛀁*5,*7」「燃𛀁*7,*12」「若𛀁わか𛀁*11」「疩𛀁を𛀁*2」等。
ダ行䞋二段動詞は他にも、「甘ゆ・嘶ゆいばゆ・癒ゆ・芚ゆ・厩ゆくゆ・凍ゆこごゆ・肥ゆ・冎ゆ・饐ゆすゆ・聳ゆそびゆ・費ゆ・萎ゆなゆ・煮ゆ・映ゆ/栄ゆ・冷ゆ・増ゆ・吠ゆ・たみゆ・悶ゆ」等がある。

『䞇葉集』の「也末叀衣野由支」に぀いおは倧野(1977) に考察あり。曰く䞇葉集の巻䞀八には、奈良時代らしからぬ仮名遣いが「五箇所䞀八銖」に集䞭しお芋られ、これは損傷を埌の䞖に補修した結果ではないかずのこず。そしお「也末叀衣野由支」もその郚分に含たれるずのこずである。

助動詞ナ・ラナの掻甚圢未然・連甚・呜什 及び 転成名詞*1,*7,*8

證・衣増
「か行けば人に厭は𛀁、かく行けば人に憎た𛀁*7」「寝ら𛀁*7」「忘ら𛀁*1,*7」等。

あがたぬしは𛀁人名【瞣䞻波延*2・瞣䞻葉江*4】

證
證補は「は𛀁」に「抮」ず圓おる。

あこ𛀁【距*14】

證・衣
證補は「こ𛀁」に「蹎𛀁」ず圓おる。

あべのは𛀁ひめ人名【阿郚之波延比賣*2】

證
證補は「は𛀁」に「抮」ず圓おる。

xあをひ𛀁【竹刀】

衣
和名抄の「阿乎比衣」から。
衣延蟚は埌䞖「アヲヒナ」ずも云うこずを論拠に「𛀁」ずしおいるが、e/jeは混同埌、共にjeになったずされおいるので、可胜性ずしおは「あをひえ → e/je混同 → あをひ𛀁 → あをひゆ」も残る。

いぬえ【𬜼(U+2C73C){苪の䞋に䞇}*13・蘇*16・假蘇*16・銙薷*16】

證・衣・衣補
證補は「え」に「荏」ず圓おる。衣延蟚補は「犬荏」ず圓おる。「蘇 以奎衣 䞀名 乃良衣*16」「假蘇 乃々衣 䞀名 以奎衣*16」
→ののえ・のらえ

いはく𛀁【岩厩*7】

證・衣
衣延蟚は「く𛀁【厩】」でも芋出しを立おおいる。

いり𛀁【入江*2,*7】

證

?いをのふ𛀁【脬】

衣補
和名抄の「䌊乎胜垃江」から。
「の笛」ず捉えるなら「𛀁」でOK。

うち𛀁する【打ち寄する*7】

證・衣増
衣延蟚増は「𛀁する」で芋出しを立おおいる。

xう𛀁ふせり【瘌臥】

衣補
和名抄の「宇江䞍䞖利」から。
證補には同じ和名抄の䟋ずしお「瘌卧・乎江垃䞖利」も瀺されおいるが、同語ないし同源か。

え-接頭蟞*2,*4

證・衣増
「え-をずこ*2」「え-をずめ*2」「え-ひめ*2」等。證補は「え」に「可愛」ず圓おる。「可愛歀云哀*4」
→ささらえをずこ

え【抎】

證
→えな぀ひめ・えのき

え嘆きの声*2,*4

證・衣増
「え、くるしゑ『嗟、苊しゑ』*4」
「疊疊志倜胡志倜ええしやこしや*2」に぀いお──證補は『叀事蚘䌝』の「疊は盈の誀写」説を採っお「盈々志倜胡志倜」ずし、「盈々」を「𛀁𛀁」ず読むが、ここでは橋本(1970:204-211) 等にある「疊疊亞々」説を採り、「ええ」ず芋なした。證補は「𛀁𛀁」に「嗟」ず圓おる。

え可胜の意味を衚す副詞*6,*7,*12

證・衣増
「え芋ずお*6」「えも名付けたり*7」「えこそ*12」。證補は動詞の「埗」ず区別せず。

え【荏*13】

證

えかさ【𫈆(U+2B206){草冠に䌜}*13】

證
語矩䞍明。證補には「衣加䜐*13」ずあり。證補は「え」に「荏」ず圓おる。「荏笠」の意味か。

xえかばら

衣
和名抄の「衣賀波良」から。衣延蟚は暫定的に「え」ずしおいる。

?えぞ地名【蝊倷】

衣
衣延蟚は蝊倷からの類掚で「え」ずする。

xえた地名【英倚信濃・加賀の郷名】

衣
和名抄においお信濃の「英倚」には「衣倪」ず、加賀のそれには「江倚」ずそれぞれ振り仮名衚蚘されおいるこずから、衣延蟚はこの「英倚」を/e/←→/je/の振り分け察象ずしお取り䞊げおいる和名抄の振り仮名は「え・𛀁」混同埌のものなので、この堎合「衣」ず「江」は同音。
衣延蟚は、1) 「英」の字の反切ず、2) 志摩の「英虞」に「阿呉あご」、矎䜜の「英倚」に「安䌊倚あいた」、備䞭の「英賀」に「阿加あが」等の衚蚘䟋があるこずずを論拠に、「英」はア行音であるずし、「英」を「え」に分類しおいる。
しかしこの信濃・加賀の郷名の「英倚」に関しおは橋本(1970:216-218) に怜蚌があり、叀くは「あがた」ず読たれおいお、「えた」ずいう読み方は埌䞖のものである可胜性が指摘されおいる前述の矎䜜の「英倚」のほうは、本項ず同衚蚘にもかかわらず「あいた」であるこずにも泚意。
「英倚」の「英」が「え」か「𛀁」かずいう問題は、「呉音以前に日本に䌝わっおきた叀音ず思しき『あい・あが[aŋ]?』のような読み方から転蚛したもの」ず解釈するなら、衣延蟚にある通り「え」の可胜性が高いずいうこずになる。しかし「時代が䞋っおから挢音『゚む』の圱響を受けお生じた読み方」ず芋るなら、「英」が「え」か「𛀁」かは字音研究に拠るこずになる。

xえだち【圹立】

衣増
衣延蟚は、本居宣長の「えだち・え぀ぎの『え』は、疫えやみの『え』ず同源であろう」ずの説を匕き、「え」ずしおいる。

?えち地名【愛知近江郡名・䟝智遠江郷名】

衣
衣延蟚は、和名抄にはえ𛀁の区別がないので匕くべきではないずしながらも、郡郷名はえ𛀁の区別があった奈良時代に決められたものであるこずを理由に、䟋倖的に郡名・郷名だけは和名抄の䟋でも認めおいる。本衚でもこの考え方に倣う。
「愛」「䟝」ずも「ア行のえ」ずしお甚䟋あり。

xえ぀ぎ【課圹】

衣増
衣延蟚は䞊の「えだち」ず同じ理由により「え」ずしおいる。

え぀り【棧・蘆雚*4・槀*13・𬄺(U+2C13A){朚偏に倢}*13】

證・衣
證補は「棧」ずしお分類。*13は2䟋䞭2䟋ずも「衣豆利」。「えづり」か。

えな぀地名【埗名接*7】

證
證補は「え」に「抎」ず圓おる。

えな぀ひめ人名【荏名接比賣*2】

證
證補は「え」に「抎」ず圓おる。

えのき【柃*13・抎*13・〓{朚偏に倲。𪱻(U+2AC7B) の異䜓字か}*13】

證・衣補
證補はすべお「抎」ずしお分類。「抎えの朚」の意。

えのやたのみささぎ・えのさんりょう地名【可愛之山陵*4】

證
「筑玫日向可愛 可愛歀云埃 之山陵*4」

えひ【葡萄・朚防已*13】

證・衣増
證補には「神衣比*13」ずあり。證補は「えひ」に「蒲萄」ず圓おる。
衣延蟚は「かみえび」で芋出しを立おおいる。
「ぶどう」の叀名「えび」の2拍目の濁点なし衚蚘。
→えびか぀ら・おほえびか぀ら

えひ【鰕・𬠂(U+2C802){虫偏に西}*13・魵*13・鰝*13・蝊*16】

證・衣
證補はすべお「鰕」ずしお分類。
甲殻類の「海老えび」のこず。2拍目の濁点なし衚蚘。

えひ【鰩・鯕*14・鱓*16】

證・衣
證補はすべお「鰩」ずしお分類。
魚の「えい」のこず。
→からえひ

えびか぀ら【玫葛*16】

證・衣
證補は「えび」に「蒲萄」ず圓おる。
→おほえびか぀ら

えびす【倷・蝊倷*8,*13】

證・衣
證補はすべお「倷えびす」ずしお分類。
→えびすくさ・えびすくすり

えびすくさ【倷草・茯*13・勺薬*14・決明*16】

證・衣
證補は「えびす」に「倷」ず圓おる。

えびすくすり【倷薬・芍薬*16】

證・衣
證補は「えびす」に「倷」ず圓おる。

?えびすね【地楡】

衣
和名抄の「衣比須犰」から。衣延蟚は「えびす草の䟋」ずする。

?えびすめ【昆垃】

衣
和名抄の「衣比須女」から。衣延蟚は「倷海藻なるべし」ずする。

えびたらむし【蠖】

衣増
衣延蟚増は字鏡からの䟋ずするが、證補には蚘茉なし。「衣比䞇良虫たた止加介」

xえひら【蠶簿】

衣
和名抄の「衣比良」から。衣延蟚は暫定的に「え」ずしおいる。

えみし【蝊倷*4】

證・衣
證補は「倷えみし」ずしお分類。

?えめむし【巀姑・蜲*13】

證・衣
證補は「巀姑」ずしお分類。
『日本囜語倧蟞兞 瞮刷版』小孊通によるず、「えめむし」ずは「節足動物『わらじむし草鞋虫』の異名」ずのこず。

※橋本(1970:213) によるず、新撰字鏡には「衣女虫えめむし」の他、「江女虫𛀁めむし」ず曞いた䟋があるずいうが、證補・衣延蟚ずも埌者は蚘茉なし。囜䌚図曞通のアヌカむノでも前者は芋぀かれど埌者は芋぀からぬため、ひずたづ '?' 蚘号付きずする。
「衣女虫」の䟋十二巻本の䟋1巊頁1行目3字目「蜲」の䞋、䟋2右頁3行目最埌「虫+毎」の䞋・抄録の䟋1巊頁䞋段4字目「虫+ム+毌」の䞋、䟋2右頁䞋段終わりから3字目「虫+毎」の䞋など。

えやみ【瘧・疫】

衣
衣延蟚は字鏡からの䟋ずするが、證補には蚘茉なし。衣延蟚は字鏡の「瘧衣也䞉」ず和名抄の「疫衣倜矎」ずで別々に芋出しを立おおいるが、ここではたずめた。

えやみくさ【疫草・韍膜*16】

證・衣
證補は「えやみ」に「疫」ず圓おる。

えらぶ【撰】

衣
衣延蟚では「𛀁らみ」ずいう語圢で蚘茉。衣延蟚は䌌た意味の「遞るペル」からの類掚でダ行の「𛀁」ずしおいるが、『西倧寺本金光明最勝王経』『金剛波若経集隓蚘』等に「えらぶ」衚蚘あり。

おき぀ふか𛀁【沖぀深江*7】

證

おほ𛀁【倧枝・倧兄*10】

證
「倧枝謂倧兄*10」

おほえびか぀ら【𮑱(U+2E471){草冠に補}陶 䞀名 蘡薁*16】

證
證補は「えび」に「蒲萄」ず圓おる。

おほは𛀁のみこ人名【倧矜江王*2・倧葉枝皇子*4】

證
證補は「は𛀁」に「抮」ず圓おる。

おほ𛀁のみこ人名【倧枝王*2・倧江王*2】

證
證補は「𛀁」に「兄」ず圓おる。

!かの𛀁【庚】

衣
「金の兄」ずいう語構成からしおOK。

かはたた𛀁地名【川俣江*4】

證
證補は「𛀁」に「枝」ず圓おる。

xかも𛀁【鎚柄】

衣
和名抄の「賀毛江」から。衣延蟚は鎚柄ずいう字を論拠ずしおいる。

?か𛀁【茅】

衣増
䞇葉二十ずいうが、證補には蚘茉なし。
「茅かや」の東蚛りか。

?からえ【萆麻】

衣
和名抄の「加良衣」から。衣延蟚曰く「挢荏なるべし」
衣延蟚の「萆」は䞋が「廟」

からえひかれひ【王逘魚*16】

證・衣補
證補は「えひ」に「鰩」ず圓おる。
「鰈かれい」の叀名。「唐からの𛀀むえい」

!きの𛀁【甲】

衣
「朚の兄」ずいう語構成からしおOK。

くさか𛀁【日䞋江*2】

證

くすか぀らのはえ【鹿藿*16】

證
證補は「はえ」に「苗」ず圓おる。

?くだのふ𛀁【小角】

衣
和名抄の「久倪胜垃江」から。
「の笛」ず捉えるなら「𛀁」でOK。

?こたぶ𛀁【籥】

衣補
和名抄の「叀䞇垃江」から。
「狛笛」の意か。いづれにせよ「笛」なら「𛀁」でOK。

こ𛀁たり【嶫*14】

證
證補は「こ𛀁」に「肥」ず圓おる。

こ𛀁づち【肥土・墺*13】

證・衣補

こ𛀁ならふ【跒*13】

證・衣補
證補は「こ𛀁」に「越」ず圓おる。

さかは𛀁・さかば𛀁【栄映𛀁*4,*7】

證・衣
衣延蟚は「抮さか𛀁」ず䞀緒に扱う。

さか𛀁【栄𛀁・栄枝䌊勢の野の*4】

證
證補は「𛀁」に「枝」ず圓おる。

?さざ𛀁【栄螺子】

衣・衣補
和名抄の「䜐巊江」から。衣延蟚補に「續玀に螺江臣あり延に埓ふべし」ずあるが、證補には蚘茉なし。

ささらえをずこ【月*7】

證・衣

xさす𛀁【棬】

衣
和名抄の「䜐須江」から。衣延蟚は暫定的に「𛀁」ずしおいる。

さ𛀁だ【小枝*7】

證

しづ𛀁【䞋枝*2,*4,*7】

證・衣

しも぀𛀁【䞋぀枝*2】

證

すは𛀁【機*13】

證・衣補
證補には「須波江*13」ずあり。證補は「𛀁」に「枝」ず圓おる。
衣延蟚補は「楚」ず衚蚘。

すみの𛀁地名【墚吉*7・䜏吉*7・須矎乃延*7】

證・衣
證補は「𛀁」に「江」ず圓おる。
衣延蟚は「䜏吉」ず衚蚘。

せえ【海蠺・尚蹄子*16】

證
證補は「海蠺」ずしお分類。「せ」の語尟を匕いたものか。

せをのふ𛀁【簫】

衣
衣延蟚の「くだのふ𛀁」「ふ𛀁」のずころに、字鏡には「簫」を「䞖乎乃䞍江」ずする䟋があるずいうが、證補には蚘茉なし。ただ證補には同じ字鏡の䟋ずしお「簫」を「をのふ𛀁」ず読んだものが茉っおいる。ひょっずするず「䞖乎乃䞍江」ず区切ったのがこの「をのふ𛀁」か。
→をのふ𛀁

぀きが𛀁【槻が枝*2】

證
「癟足る槻が枝*2」

぀く𛀁【机】

他
蚓点資料に䟋があるよう。『日本囜語倧蟞兞』小孊通の「机」の項等を参照。

!぀ちの𛀁【戊】

衣
「土の兄」ずいう語構成からしおOK。

なか぀𛀁【䞭぀枝*2,*4】

證

なが𛀁【蜅*14】

證・衣
「長柄」の意。證補には「茗 奈加江乃波志乃ク䜐比*14」ずあり。

なが𛀁地名【長枝・長江恵賀の*2】

證

なは𛀁【楉*13】

證
證補には「奈波江*13」ずあり。證補は「𛀁」に「枝」ず圓おる。

xなたえのき【荊】

衣
和名抄の「奈末江乃朚」から。衣延蟚は「生抎なるべきか」ずしお、暫定的に「え」ずしおいる。

?ぬかえ【蘇】

衣増
和名抄の「乃良衣 䞀云 奎加衣」から。
「ののえ」「のらえ」の類なら「え」で良さそう。

ぬかすは𛀁【機】

衣補
字鏡の「匩可須波江」からずするが、證補の「須波江*13」ず同じ箇所を、異なる区切り方で匕いおいるだけの可胜性あり。
→すは𛀁

ぬ𛀁【鵺*2,*13・鶍*14】

證・衣
證補はすべお「鵺」ずしお分類。
衣延蟚は「ぬ𛀁こずり」ず䞀緒に扱う。
→ぬ𛀁くさ・ぬ𛀁こずり・ぬ𛀁ずり

ぬ𛀁くさ【鵺草*2】

證・衣
衣延蟚は「偃草」ずしお分類。

ぬ𛀁こずり【鵺子鳥*7】

證・衣
衣延蟚は「ぬ𛀁」ず䞀緒に扱う。

ぬ𛀁ずり【鵺鳥*7】

證

xね𛀁【城】

衣補

ののえ【假蘇*16】

證
證補は「え」に「荏」ず圓おる。「野の荏」か。「乃々衣 䞀名 以奎衣*16」
→いぬえ

のみの𛀁【樈*14】

證・衣補
證補は「𛀁」に「柄」ず圓おる。

?のむどふ𛀁【吭】

衣
和名抄の「乃無止垃江」から。
「喉笛」の意か。いづれにせよ「笛」なら「𛀁」でOK。

のらえ【蘇*16】

證・衣
證補は「え」に「荏」ず圓おる。「野良荏」か。「以奎衣 䞀名 乃良衣*16」
→いぬえ

はえ【苗・柀柒*14】

證
證補は「苗」ず圓おる。
→くすか぀らのはえ

は𛀁【栄𛀁】

證
→あがたぬしは𛀁・あべのは𛀁ひめ・は𛀁ひめ・やかは𛀁ひめ

は𛀁【鰷・𬵍(U+2CD4D){魚偏に地}*13】

證・衣
證補は「鰷」ず圓おる。衣延蟚は「𩵔(U+29D54){魚偏に也}」ず衚蚘。

は𛀁ひめ人名【荑媛*4】

證・衣
證補は「は𛀁」に「抮」ず圓おる。

?はらのふ𛀁【倧角】

衣
和名抄の「波良乃垃江」から。
「の笛」ず捉えるなら「𛀁」でOK。

ひえずり【鵯*16】

證・衣
この*16『本草和名』の「比衣止利」ずいう仮名衚蚘を信じるなら、語源を「皗鳥」ずする説は成り立たず。衣延蟚は和名抄「比衣土里」を匕き぀぀、「今ヒペドリずも云也延なるべし」ずする。
→ひ𛀁

ひこば𛀁【蘖孫生𛀁・荑*13・皬*13】

證・衣

ひこ𛀁【孫枝・柯*8・杪*13・秒*13】

證・衣
證補は「𛀁」に「枝」ず圓おる。

!ひの𛀁【䞙】

他
衣延蟚には「庚・甲・戊・壬」はあるのに「䞙」がないので、独自に远加。
「火の兄」ずいう語構成からしおOK。

ひ𛀁【皗*7,*13】

證・衣

!ひ𛀁地名【比叡】

衣
比叡山・叡山のこず。
衣延蟚曰く「叀事蚘に『日枝ひ𛀁の山』ずあり。又『日吉』ずも曞けり」
叡・枝・吉良【𛀁し】、いずれもダ行の𛀁であり䞀貫しおいる。

ふな𛀁【㮈*16】

證
證補は「な𛀁」に「㮈」ず圓おる。「奈以 䞀名 垃奈江*16」

ふ𛀁【笛*4,*8】

證・衣
→せをのふ𛀁

ほ぀𛀁【䞊枝*2,*4】

證・衣

ほり𛀁【堀江*7】

證

た぀だ𛀁のながはた地名【束田江の長浜*7】

證

た぀だ𛀁のはた地名【束田江の浜*7】

證

!みづの𛀁【壬】

衣
「氎の兄」ずいう語構成からしおOK。

xみづ𛀁のたた【皚枝玉】

衣増

み𛀁しの地名【矎吉野*2,*4】

證・衣補
證補には「矎延斯怒*2」「矎曳之匩*4」ずあり。證補はそしお衣延蟚も共に「み𛀁しぬ」ず読んでいる。前者の「怒」は「ヌ」ずも「ノ甲」ずも読めるが、埌者の「匩」は「ノ甲」ず読むのが珟代では原則なので、ここでは「み𛀁しの」ずした。
→𛀁しの

もも𛀁぀きのき【癟枝槻朚*7】

證

!も𛀁ぎ【萌黄】

衣
兞拠は瀺されず。
「萌𛀁黄」ずいう語構成からしおOK。

!も𛀁くひ【燌】

衣
和名抄の「毛江久比」から。
「燃𛀁杭」ずいう語構成からしおOK。

やがは𛀁なす*2,*4

證・衣補
「倜賀波延那須*2」。證補は「は𛀁」に「抮」ず圓おる。
證補には*4の䟋ずしお「那逓波曳灘須十䞀」があるが、これは「怰逓波曳」の誀写ず芋お、ここに加えた。
衣延蟚補は「圌朚抮」ずしお分類。

やかは𛀁ひめ人名【八河江比賣*2・矢河枝比賣*2】

證
證補は「は𛀁」に「抮」ず圓おる。

やくは𛀁・やぐは𛀁【八桑枝*11】

證・衣増
證補は「は𛀁」に「生𛀁」ず圓おる。衣延蟚増は「圌朚抮」ずしお分類。

𛀁【兄*2】

證
「兄幎長の者をしたかむ*2」

𛀁【枝*2,*4,*7】

證
「癜暫が枝を*4」「本も枝も*7」「束が枝の*7」等。
→おほは𛀁のみこ・おほ𛀁のみこ・しづ𛀁・しも぀𛀁・぀きが𛀁・なか぀𛀁・ほ぀𛀁・もも𛀁぀きのき・𛀁だ・𛀁だ𛀁だ・をは𛀁のみこ

𛀁【江】

證
→いり𛀁・おき぀ふか𛀁・くさか𛀁・ほり𛀁

𛀁かめ【元の䞋に亀のような字。黿に䌌おいる*13】

證・衣補
語矩䞍明。證補は「𛀁」に「江」ず圓おる。

?𛀁くに地名【兄國】

衣
䌊勢郷名和名抄「江久爟」から。衣延蟚は「兄國の字による」ずする。
「えち」のずころで曞いた理由により、郡名・郷名は基本的に?ずする。

𛀁し【良し・善し・吉し*4,*7】

證
證補はすべお「吉」ず圓おる。「𛀁き*4」「𛀁けむ*4」「𛀁しも*7」

𛀁しの地名【吉野*4】

證
證補には「曳之匩*4」ずあり。證補は「𛀁しぬ」ず読んでいる。
→み𛀁しの

𛀁だ【枝*2,*4,*7,*15】

證・衣
「抛が枝*4」
→𛀁だ𛀁だ

!𛀁だ【肢】

衣
和名抄の「江倪」から。衣延蟚「枝に倣ふ」
「枝」ず同源。

𛀁だ𛀁だ【枝枝*4】

證

x𛀁な【胞衣】

衣補
衣延蟚補は「兄」ず同源ずしお「𛀁」ずするが劂䜕。
橋本(1970:221-223) に怜蚌あり。

?𛀁の地名【頎嚃】

衣
薩摩郡名和名抄「江乃」から。
和名抄蚘茉の郡名・郷名であっおも、読み方を瀺した郚分の仮名衚蚘この䟋で蚀うず䞊の「江乃」は、え𛀁混同埌のものなので信頌できず。
ただこの語は、橋本(1970:200-204) に怜蚌があり、それに基づきここでは?ずした。

𛀁ひ*7

證・衣増
東歌。垯の蚛りずも結ゆひの転ずも。

𛀁びかづら【塩味葛*3】

證
證補は「𛀁び」に「蒲萄」ず圓おる。*3『出雲颚土蚘』にだけ珟れる衚蚘で5䟋䞭5䟋ずも「鹜味葛」。他の資料では「蒲萄」は「えひ」であるこずに泚意。出雲の方蚀音が反映されたものか。

!𛀁ふり【朳】

衣
和名抄の「杷の無霒者江垃利」から。衣延蟚にもあるように「柄振」の意。

𛀁むほうし【塩増絮*13】

證
語矩䞍明。證補には「江牟保宇之*13」ずあり。「増」にホりず圓おられおいる点疑わしい。

𛀁ら【鉺*14】

證・衣増・衣補
「耳玉江良*14」。證補は「𛀁ら」に「揺ら」ず圓おる。
衣延蟚増は「みみだた𛀁ら」ずしおも芋出しを立おおいる。衣延蟚増曰く「是はゆに働きお玉ゆらなり」

𛀁をぢ【阿䌯*13】

證・衣
「兄をぢ」の意。

をのふ𛀁【簫*14】

證
衣延蟚には字鏡の䟋ずしお「䞖乎乃䞍江」が茉っおいる。「䞖乎乃䞍江」ず区切った䟋がこの「をのふ𛀁」か。
→せをのふ𛀁

をは𛀁のみこ人名【小矜江王*2・小葉枝皇子*4】

證
證補は「は𛀁」に「抮」ず圓おる。

文献番号䞀芧兌 『叀蚀衣延蟚證補』で怜蚌せられおいる文献䞀芧

おたけ・10䞖玀以前の文献に芋圓たらぬ語の堎合

 10䞖玀以前の資料に甚䟋が芋぀からぬ語や、え・𛀁の混同埌に生たれた語に぀いおも、語源や語構成からえ・𛀁の別が掚定できるこずがありたす。『日本囜語倧蟞兞』の語源情報を参考に、そのような䟋をいく぀かご玹介したす。

えせ-䌌非-

「えせぬ副詞の「え」「せぬ」」が玄たったもの、ずいう説に埓えばア行のえ盞圓。
 たた、「おそ」の母音が転じた、ずいう説に埓っおもやはりア行のえ盞圓。

えお吉・えお公

「えお」は「埗手」の意味、ずする説に埓うならア行のえ盞圓。

えびす戎・恵比寿

「蝊倷」ず同語源ず思われるのでア行のえか。

えら鰓

「いら苛」ず関係あり、ずする説に埓うならア行のえ盞圓。

えり襟

語源・語構成ずも䞍詳なれど、「えり」の「え」の郚分は恐らく「衣」であろうからア行のえか。『日本囜語倧蟞兞』によれば、叀くは「ころものくび」「きぬのくび」ず称したずいい、この語が「衣え」「りくびに該圓する䜕かの語」に由来する可胜性を裏付ける。
䞀方、もしこの語が玔粋な和語であるのなら、先述の掚枬は成り立たず、E/YEの別は完党に䞍明ずなる。
『日本囜語倧蟞兞』に玹介されおいる諞説のうちの䞀぀、「『ぞり』が転じた」ずする説は、1) ハ行子音は近䞖初頭たで唇で発音する/Éž/であったこず、2) 同時期のE/YE統合音は/je/であったこず、などから難しいように思われる。

えり魞

「入るいる」の蚛、ずする説に埓えばア行のえか。

𛀁えかっこし

「𛀁え」は、「よい良い」が[yoi]→[ye:]→[e:]ず蚛ったものなので、ダ行の𛀁盞圓。

 䞀方、「えげ぀ない」「えらい偉い」のごずき語は、語源や語構成がはっきりせぬため、䞊のような掚枬を行うこずすら叶いたせんこれらはもしかするず、え・𛀁の二択どころか、え・𛀁・ゑの䞉択である可胜性もありたす。
 このような「え」「𛀁」の区別が掚定すらできない語に぀いおは、ひずたず䞀埋に「え」ずしおおくより他にはなさそうです。

参考資料

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