2020年8月更新分より、錦明朝およびその派生の錦源明朝、そして霧ゴシック、霧明朝はCIDの並びが共通化されてAdobe-Japan1-7の上位互換となっています。ただしAdobe-Japan1は独自拡張を認めていないことから、ROSはAdobe-Japan1を名乗らず現時点ではAdobe-Identity-0にしてあります。将来的には独自のROS名にする可能性もあります。
このグリフ集合の関連情報を以下にまとめました。
この範囲は前述したフォントすべてでAdobe-Japan1-7に準拠したCIDの並びになっていますが、現時点ではどのフォントもCID+0からCID+23059までをフルサポートはしていません。
グリフがないCID番号はUnicode値との紐付けを解除して、対応していない文字が空白で表示されたり豆腐に化けたりせぬようにしてあります。
Adobe-Japan1-7に含まれている仮名文字用グリフは、次の8種類に分類されます:1) 既定のもの、2) 縦書き用の小さな仮名(「っゃゅょ」など。横書き用は下のほうへ寄せてあるのに対して縦書き用は右のほうへ寄せてある)、3) 横書き専用デザインのもの、4) 縦書き専用デザインのもの、5) プロポーショナルな横書き専用、6) プロポーショナルな縦書き専用、7) ルビ用(縮小されることを見越してあらかじめ太めに作ってある)、8) 半角。
このうち 1), 2), 8) の3種類がもっとも古くからあるもので、他は後にSupplementとして追加されたものです。
Adobeが提供しているAdobe-Japan1用のGSUBテーブルにおいて、縦書き時に既定のグリフが自動的に縦書き用グリフへと切り替わるよう指示されているのは小さな仮名のみです。つまり 1) → 2) という置換のみが「義務的」です。それ以外の仮名文字では、縦専用グリフの使用は任意となっていて、4) に置換するにはvknaや、hkna+vert/vrt2を使って明示的に切り替える必要があります。
これに対して源ノ角ゴシック・源ノ明朝では、仮名文字用グリフは a) 既定兼横書き用、b) 縦書き用、c) 半角の3種類に整理されていて、プロポーショナルなグリフは a) または b) の両端の余白をpalt(横書き時)ないしvpal(縦書き時)でカットすることによって実現しています。
そして縦書き時には、vert/vrt2によってすべての仮名文字が常に縦書き用グリフへと自動的に置換されるようになっています。
霧ゴシック・霧明朝ともに、派生元である源ノ角ゴシック・源ノ明朝の仕様を受け継ぎつつAdobe-Japan1の仕様にも合わせるため、仮名グリフについては次のように処理しました。
即ち 1), 2), 4) にはすべてグリフが割り当てられていて、逆に 3), 5), 6), 7) は空っぽの状態です。このうち 3) は a) を流用することで、そして 5), 6) についてもpalt, vpalの情報を使ってグリフを作り出すことで、それぞれ埋めることも一応可能ではありますが、デザインに差異がない以上、同じグリフを複数のCIDに割り当てても単にフォントサイズを膨らませる結果にしかなりませんので、現時点では見送ってあります。
2020年8月現在、CID+23058~23059 (U+32FF) は霧ゴシックにのみグリフが入っています。源ノ明朝でこの字を含む版がリリースされ次第、霧明朝、錦源明朝にも含める予定です。
Adobe-Japan1-7の続きの部分です。主に語学や音声学に関するものが入っています。この範囲は前記4フォントファミリーすべてで対応しています。
詳細は次の通りです。
CID値: Unicode値 | 解説 |
---|---|
23060: 0114 23061: 0115 23062: 012C 23063: 012D 23064: 014E 23065: 014F |
それぞれ E/e, I/i, O/o の上にブレヴェ (breve) と呼ばれる記号を乗せたものです。母音にブレヴェを乗せたグリフのうち、A/aとU/uとはAdobe-Japan1に含まれていますが、E/e, I/i, O/oは含まれていません。 なお最後の2字、O/o の上にブレヴェを乗せたものだけは、源ノ角ゴシック (Source Han Sans) と源ノ明朝 (Source Han Serif) にも含まれています。 |
23066: 0059+0306 23067: 0079+0306 23068: 0232 23069: 0233 |
それぞれ Y/y の上にブレヴェ、マクロン (macron) と呼ばれる記号を乗せたものです。ラテン語では Y/y は母音字であることから、長短の区別を示す際にこれらの記号が付与されることもあります。 |
23070: 0100+0306 23071: 0101+0306 23072: 0112+0306 23073: 0113+0306 23074: 012A+0306 23075: 012B+0306 23076: 014C+0306 23077: 014D+0306 23078: 016A+0306 23079: 016B+0306 23080: 0232+0306 23081: 0233+0306 |
それぞれ A/a, E/e, I/i, O/o, U/u, Y/y の上にマクロン (U+0304) を乗せ、さらにその上にブレヴェ (U+0306) を乗せたものです。ラテン語を綴る際、「長母音としても短母音としても発音される」ことを示すのに使われます。 |
23082: 01FC 23083: 0152+0301 23084: 0153+0301 |
それぞれ Æ (U+00C6), Œ, œ の上に鋭アクセント(アクサンテギュ)を乗せたものです。こちらもラテン語(主に教会ラテン語・中世ラテン語)で使われることがあるので収録しました。 ラテン語用グリフはここまでです。 |
23085: 01C0 23086: 01C1 |
ここからはIPA記号です。
IPA公式サイトにあるUnicode値付きのチャートの2段目、CONSONANTS (NON-PULMONIC) という表の左の列には、吸着音 (Clicks) と呼ばれる記号が5つ縦に並んでいます。このうち1番上のU+0298と、下からの2番目のU+01C2とはAdobe-Japan1-7に収録済みです(それぞれCID+15820、CID+15821)。 残ったU+01C0とU+01C1とについては、それぞれ | (U+007C) および‖(U+2016) のグリフを流用することも検討しましたが、これらのグリフはステムの幅や高さがU+01C2と著しく異なっていて並べた時に統一感がないことから、U+01C0とU+01C1とには別CIDを割り当てました。 |
23087: 029B |
JIS X 0213が正しく対応し損ねたと思われる文字その1です。JIS X 0213の表では大文字のGをベースとしたグリフで示されていることもあり(1面11区9点)、大半のフォントではƓ (U+0193) にマッピングされています。 しかし同表でこの付近(1面11区)に配置されている文字はいずれもIPA記号であることを踏まえますと、JIS X 0213が本当にサポートしたかったのはIPA記号のU+029B(グリフの高さがx-height相当のもの≒スモールキャピタルのGがベースであるグリフ)であったのではないかと推察されます。 IPAの公式チャートに載っている記号は一通り対応するという方針の下、このU+029Bも不足分を補うため収録しました。 |
23088: 02E4 |
こちらはAdobe-Japan1が正しく対応し損ねたと思われる文字です。Adobe-Japan1の表でCID+15897は次のようなグリフで示され、かつCMapではU+02C1と結びつけられています。
しかしこのCID+15897のグリフのように、縦ステムの底部に下駄のようなものがあるのは、Unicodeの表ではU+02C1ではなくU+02E4のほうです。
Unicodeの表でU+02E4は「Additions based on 1989 IPA」という見出しの下にあり、IPA記号であることが分かります。対してU+02C1は「Miscellaneous phonetic modifiers」という見出しの下にあり、「IPA記号風の何か」に過ぎぬらしいことが分かります。 |
23089: 02E7+02E5 23090: 02E9+02E7 23091: 02E7+02E6+02E8 23092: 1DC4 23093: 1DC5 23094: 1DC8 |
IPAのトーン記号です。それぞれ high rising, low rising, rising-falling を表すdiacriticsおよび音調曲線です。JIS X 0213に入らなかった経緯は不明です。1989年版のIPAチャートにも掲載されていますので(右下)、少なくとも規格策定当時まだなかったという理由ではなさそうです。 |
23095: 2C71 |
2005年に追加されたIPA記号です。JIS X 0213やAdobe-Japan1-6制定時にはまだなかったためどちらにも入っていません。 |
23096: A71B 23097: A71C |
再びIPAのトーン記号です。 |
23098: 0251+0301 23099: 0251+0300 23100: 025B+0301 23101: 025B+0300 |
JIS X 0213が正しく対応し損ねたと思われる文字群その2です。1面11区38-39点および48-49点は、ほとんどの日本語フォントでそれぞれギリシア文字のU+1F70, U+1F71, U+1F72, U+1F73にマッピングされています。しかしこの付近の文字は基本的にIPA記号ですので、本当にサポートしたかったのはIPA記号であるU+0251とU+025Bとの上に、それぞれU+0301とU+0300とを乗せたものであったのではないかと判断し、これらを改めて追加しました。 CID+9419~9420、CID+9433~9434を再利用して多重マッピングにしなかったのは、ラテン文字ベースのIPA記号とギリシア文字とでは、グリフのデザインが微妙に異なっているケースも少なくないためです(特にU+0251のɑとU+03B1のα)。 |
23102: 0300 23103: 0301 23104: 0302 23105: 0303 23106: 0304 23107: 030A |
Adobe-Japan1では幅ありのdiacritics (U+02B0~U+02FF他) と、合成を前提とした0幅のdiacritics (U+0300~U+036F) とで同じグリフを共有しているケースがあります。例えばCID+65のグリフは、「U+0060, U+02CB, U+0300」という3つのコードポイントと結びつけられています。
この状態が少し気になりましたので、「IPA表に掲載されているもの」に限って先のような包摂を解除し、合成を前提とした0幅のdiacritics (U+0300~U+036F) のほうには別CIDを割り当てました。
なおこれに関連して、Adobe-Japan1のチャートでは「幅ありグリフ」で例示されているCIDでも、それが0幅文字(U+0300~U+036Fの範囲)にのみマッピングされている場合は、独自に0幅グリフに置換しました。具体的には次のものが該当します。
Adobe-Japan1において幅ありのdiacriticsと、0幅のdiacriticsとがグリフを共有している例は他にもありますが、「IPA表に掲載されているもの」という条件を満たさないものについては今回は何もしませんでした。 |
23108: 035C |
JIS X 0213が正しく対応し損ねたように思われる文字その3です。JIS X 0213の1面11区56点(音符のタイのような記号)は大抵の場合、U+203Fに結びつけられていますが、この文字は「1面11区50点(=U+0361)とペアをなしているようであること」「この付近はIPA記号が集まっていること」を踏まえますと、本当はU+035Cとマッピングされるべきものであったのではないかと考え、新規に追加しました。 IPA記号の補完はここまでです。 |
23109: 017F |
小文字のsを縦に引き伸ばした文字です。OCRでは誤ってfとして読み取られてしまっているのをよく見かけます。 |
23110: 1B000 23111: 1B001 |
当サイトのメインです。 |
23112: 3089+309A 23113: 308A+309A 23114: 308B+309A 23115: 308C+309A 23116: 308D+309A 23117: 30E9+309A 23118: 30EA+309A 23119: 30EB+309A 23120: 30EC+309A 23121: 30ED+309A |
それぞれ「らりるれろラリルレロ」に合成用半濁点 (U+309A) を重ねたものです。外来語のL音を表記するために考案されたもので、国会図書館のデジタルコレクションの中にちょくちょく用例が見つかります。 例1aと1b、 例2、 例3、 例4aと4b、 例5、 例6(ひらがな)。
いわば外来語表記用に考案された仮名として「ヴ」ほどには世間に浸透せず、いつしか忘れられてしまったものとも言えます。同じように忘れられてしまった仮名としては濁点付ワヰヱヲというものもありますが、こちらはAdobe-Japan1に収録されています(CID+8313から8316)。 もう少し日の目を見てほしいと思いフォントに収録しました。 |
23122-23171 |
ここからは縦書き時に使用されることを意図したグリフです。 |
23172-23173 |
合成用の濁点 (U+3099, CID+16326) および同半濁点 (U+309A, CID+16327) の縦書き時用グリフです。 それに対して上の縦書き用グリフは、グリフのadvance height(「送り幅」ならぬ「送り高さ」)を0にした上でVORGを-120に設定することにより、直前の(真上の)グリフに重ねて描画されるように作ってあります。 源ノ角ゴシック・源ノ明朝ではGPOSとvertとを組み合わせ、既定兼横書き用グリフを直接右上へ移動させることで縦書きに対応させようとしています。しかしこのようなvertの使い方はOpenType仕様書に記載がなく、期待通りの動作をする環境は少ないのではないかと思われますので、従来からあって仕様書にも載っているGSUBを使った方法で適切なグリフに切り替わるようにすべくCIDを割り当てました。 これらのグリフを利用した合成は、直前の文字が何であれ濁点や半濁点を打つことが出来るというメリットがある反面、あくまで機械的に重ね描きするだけであることから、既に線が描画されているところに濁点や半濁点を描いてしまうことも起こり得るというデメリットがあります。そのため合成済みのグリフが用意されていない組み合わせ限定で使われるようにしてあります。 |
23174-23185 |
CID+23110から23121までの12グリフの縦書き版です。 錦明朝(派生の錦源明朝も含む)は小さな仮名(「っゃゅょ」など)を除いて、縦書き専用の仮名グリフというものを現時点では持っていません。そのためこの範囲にも何も入っていません。 |
23186: FFF9 23187: FFFA 23188: FFFB 23189: FDD0 23190: FDD1 23191: FDD2 23192: FDD3 |
拙作のSolstitiumに渡すテキストを編集する際、これらのコードポイントにグリフがあると便利なことからフォントに入れてあります。
最初の3つはそれぞれ「ルビ対象文字列開始」「ルビ開始」「ルビ終了」を表します。 |
2020年秋に増補した部分です。この範囲のグリフは現時点では霧ゴシックと霧明朝のみがサポートしています。ただもし時間と気力の都合が付くようであれば、いつか錦明朝および錦源明朝にも含められたら良いなと思い、あえて次のブロックとは切り離して配置してあります。
詳細は次の通りです。
CID値: Unicode値 | 解説 |
---|---|
23193: 0123 |
ここまでの追加により、結果として Latin Extended-Aブロック(U+0100~U+017F)で対応していないのはこの文字だけになったこと、そして対となる大文字 (U+0122, Ģ) は既にSupplement 6 (CID+20336) で追加されていることとを踏まえてこの字も含めました。 |
23194-23216 |
CID+23060~CID+23082のイタリックグリフです。 |
23217 |
U+01FD/ǽ (CID+9421) のイタリックグリフです。1つ前、CID+23216の小文字に相当するものです。 |
23218-23219 |
CID+23083~CID+23084のイタリックグリフです。 |
23220-23223 |
それぞれ U+0123/ģ (CID+23193), U+0127/ħ (CID+15816), U+014B/ŋ (CID+9436), U+017F/ſ (CID+23109) のイタリック体グリフです。ここまでの追加により、Latin Extended-Aブロック(U+0100~U+017F)でイタリック体グリフがないのはこれら4文字のみとなったので含めることにしたものです。 |
23224-23229 |
それぞれCID+23102~CID+23107(U+0300~0304, 030A)のイタリック体グリフです。 |
23230-23266 |
ここまでに出てきたCID+23193~CID+23229の縦書き用グリフです。 |
23267-23269 |
それぞれ U+0268/ɨ (CID+15827)、U+029D/ʝ (CID+15811)、U+012F/į (CID+20357) の上部の点を取ったものです。i (CID+00074)、j (CID+00075) から点を取ったものは既にAdobe-Japan1に含まれています(それぞれCID+00146、CID+09435)。 |
23270-23271 |
それぞれ U+0237/ȷ (CID+09435)、CID+23269のイタリック体グリフです。U+0131/ı (CID+00146) のイタリック体グリフは既にAdobe-Japan1に含まれています (CID+09589)。 上のCID+23267~23268については、IPA記号にはイタリック体グリフを用意しないというAdobe-Japan1の慣例に従って現時点ではイタリック体グリフを含めてありません。 |
23272-23276 |
CID+23267~CID+23271までの縦書き用グリフです。 |
23277-23278 |
それぞれ合成用の囲み白丸 (CID+16328, U+20DD) と白い四角形 (CID+11035, U+20DE) の縦書き用グリフです。合成用濁点・半濁点と同じ理由により、縦書き用グリフを別途用意してCIDを割り当てました。 |
23279: 301A 23280: 301B |
U+301AとU+301Bとです。 |
23285-23286 |
CID+23279~CID+23280の縦書き用グリフです。 |
23281-23284 23287-23290 |
この範囲は意図的に空けてあります。 |
この範囲のグリフは霧ゴシックと霧明朝のみがサポートしています。
それぞれの派生元である源ノ角ゴシック、源ノ明朝ともに収録している文字のうち、Adobe-Japan1-7になく、かつここまでの表にも含まれていないものをこの範囲にまとめて配置しました。ただし両フォントに含まれているグリフでも、日本向けではないと思われるものは除外しました。
詳細は次の通りです。濁点付きひらがなや康煕部首、ARIB記号と思われるものなどが主です。
CID値 | 解説 |
---|---|
23293-23312 23315-23714 |
グリフ数が多いのでCIDとUnicode値との対応表は別ファイルにしてあります。 何が配置されているかは次のマッピング表でも確認できます。 特記事項のあるグリフのみこの下で別途取り上げます。 |
23291: 3031 23292: 3032 |
それぞれU+3033/U+3034とU+3035とを結合済みの状態にしたものです。 |
23313-23314 |
それぞれ〆 (CID+658, U+3006)、ゟ (CID+12181, U+309F) の縦書き用グリフです。Adobe-Japan1ではこれらに対して縦書きグリフ用のCIDを割り当てていないよう(プロポーショナルならあり)でしたので、ここに配置しました。 |
源ノ角ゴシックまたは源ノ明朝の片方にしか含まれていないグリフについては、U+32FFを除いてすべて霧ゴシック・霧明朝には継承させませんでした。この種のグリフはゴシック側に2つ(version 2.001でのCIDが2649と35833)、明朝側に1つ(version 1.001でのCIDが16082)あり、いずれも康煕部首または部首補助ブロックの文字用です。
これらのグリフと紐付けされていたUnicode値に対しては、含んでいない側のフォントやAdobe-Japan1のマッピングを参考にして、別のグリフを代わりに割り当ててあります。
2020年秋の増補ではCID+23193以降をCID+23291以降へずらし、空いた空間に新規グリフを配置しましたが、今後新しいグリフを追加する時は途中に差し込まずCID+23715以降に置く予定です(具体的な追加候補は今のところありません)。
ただしAdobeがAdobe-Japan1-8をリリースし、個人的に欲しいグリフがそこに含まれていた場合に限っては、Adobe-Japan1-8準拠に再度CIDを振り直す可能性もあります。