5-B3. 霧ゴシック
霧ゴシック
「霧ゴシック」はAdobeのOpen Sourceフォントの一つ、源ノ角ゴシック(英語名:Source Han Sans)の派生フォントです。JP版をベースに、次のような変更が加えられています。
- CIDをAdobe-Japan1-7準拠に再割り当て。Adobe-Japan1-7にない文字についてはCID+23060以降に配置(この関係でROSは Adobe-Identity-0 になっています)。
- Kana Supplementブロックの𛀀𛀁(Unicode値:U+1B000~U+1B001)用のグリフなどを追加。
- プロポーショナルなラテン文字や半角片仮名などに対して、縦書き用の回転済みグリフを追加。
- 「き」「さ」の最終画を前の画と連結。
- 欧文文字の増補。
- Version 2.100にて次の248文字を追加:
- 源ノ角ゴシックにおいて不足しているJIS X 0213の文字(171文字):
æ̀ Ą ą Ć ć Ĉ ĉ Č č Ď ď Ę ę Ĝ ĝ Ĥ ĥ ħ Ĵ ĵ Ĺ ĺ Ľ ľ Ł ł ŋ Ő ő Ŕ ŕ Ř ř Ś ś Ŝ ŝ Ş ş Š š Ţ ţ Ť ť Ů ů Ű ű Ź ź Ż ż Ž ž Ɠ ǂ ǽ ɐ ɒ ɓ ɔ ɔ̀ ɔ́ ɕ ɖ ɗ ɘ ə ə̀ ə́ ɚ ɚ̀ ɚ́ ɜ ɞ ɟ ɠ ɤ ɥ ɦ ɧ ɨ ɬ ɭ ɮ ɯ ɰ ɱ ɲ ɳ ɵ ɹ ɺ ɻ ɽ ɾ ʁ ʂ ʃ ʄ ʈ ʉ ʊ ʋ ʌ ʌ̀ ʌ́ ʍ ʎ ʐ ʑ ʒ ʔ ʕ ʘ ʝ ʡ ʢ ˈ ˌ ː ˑ ˘ ˛ ˝ ˞ ˥ ˥˩ ˦ ˧ ˨ ˩ ˩˥ ̂ ̃ ̆ ̈ ̋ ̏ ̘ ̙ ̚ ̜ ̝ ̞ ̟ ̠ ̤ ̥ ̩ ̪ ̬ ̯ ̰ ̴ ̹ ̺ ̻ ̼ ̽ ͡ ὰ ά ὲ έ ‾ ‿ ⅓ ⅔ ⅕
- JIS X 0213が対応し損ねたと思われるもの(6文字):
ɑ̀ ɑ́ ɛ̀ ɛ́ ʛ ͜
- Full IPA Chart対応用の国際音声記号(30文字):
ɛ ɢ ɣ ɪ ɴ ɶ ɸ ʀ ʏ ʙ ʜ ʟ ʰ ʲ ʷ ʼ ˠ ˡ ˤ ̊ ᷄ ᷅ ᷈ ⁿ ⱱ ꜛ ꜜ ˧˥ ˩˧ ˧˦˨
- ラテン語対応用(24文字):
Ā̆ ā̆ Ĕ ĕ Ē̆ ē̆ Ĭ ĭ Ī̆ ī̆ Ō̆ ō̆ Ū̆ ū̆ Ÿ Ȳ ȳ Y̆ y̆ Ȳ̆ ȳ̆ Ǽ Œ́ œ́
- 他(15文字):
İ ı ſ ǵ ȷ ʻ ˆ ˚ ˜ ̅ ̇ ̧ ̨ ̶ 0︀(slashed-zero)
- Version 3.010にて次の3文字を追加:
- Full IPA Chart対応用の国際音声記号:
ǀ ǁ ǃ
- Version 4.000にて次の113文字を追加:
- Adobe-Japan1-7に含まれているラテン・ギリシア・キリル文字など:
ˁ ꞵ ꭓ Ċ ċ Ė ė Ğ ğ Ġ ġ Ģ ģ Ħ Į į IJ ij Ķ ķ ĸ Ļ ļ Ŀ ŀ Ņ ņ ʼn Ŋ Ŗ ŗ Ŧ ŧ Ų ų Ŵ ŵ Ŷ ŷ ΄ ΅ ⁄ ⁰ ⁵ ⁶ ⁷ ⁸ ⁹ ₀ ₁ ₂ ₃ ₄ ₅ ₆ ₇ ₈ ₉ ⅛ ⅜ ⅝ ⅞ ∆ ∏ ≤ ≥ ◊ Ά Έ Ή Ί Ϊ Ό Ύ Ϋ Ώ ά έ ή ί ϊ ΐ ό ύ ϋ ΰ ώ Ђ Ѓ Є Ѕ І Ї Ј Љ Њ Ћ Ќ Ў Џ ђ ѓ є ѕ і ї ј љ њ ћ ќ ў џ
- イタリック体グリフを追加(Version 4.000以降)。
- 合成用濁点 (U+3099)、同半濁点 (U+309A)、囲み用白丸と白い四角形(U+20DDとU+20DE)に対して縦書き用グリフを追加。VORG対応環境では、これらは直前の(真上の)文字に合成されます。
- ギリシア文字・キリル文字を全角幅に変更。OpenTypeのpalt機能を適用すると本来の幅で表示されます。
変更はすべてソースに対して行い、その後Adobe製ツール (AFDKO)を用いてビルドしましたので、前記の変更点以外は機能・品質とも源ノ角ゴシックと同じです。グリフのヒンティング情報などはすべて源ノ角ゴシックのものをそのまま継承しています。
ちなみにGoogleよりNoto Sans CJKという名称でリリースされているフォントは、名前が異なるだけで中身は源ノ角ゴシック (Source Han Sans) の同等品です。
Download
本フォントは源ノ角ゴシック (Source Han Sans) と同じSIL Open Font License 1.1の下、提供されます。
- 上記ライセンスに同意して霧ゴシック (4.112) をダウンロード(Source Han Sans JP 2.004ベース):
イタリック版で実際にイタリック体グリフが表示されるのは、「U+017Fまでの文字」および「Adobe-Japan1-7にイタリック体グリフが含まれている文字」のみです。ギリシア文字・キリル文字などその他の文字はイタリック体では表示されません。
ローマン版もイタリック版もグリフ集合は共通です。OpenTypeのital機能が使えるソフト(InDesignの「欧文イタリック」など)でご利用の場合は、別途イタリック版をダウンロードする必要はありません。
Variable font版
霧ゴシックのvariable font(可変フォント。以下VF)版です。2021年現在Adobeの小塚明朝・小塚ゴシックにもまだVF版はないようですので、Adobe-Japan1-7互換のCIDを持つvariable fontとしては世界初かもしれません。
2024/09/09追記:源ノ角ゴシックのissue#290によりますと、Windows 10/11でVF版が使えない原因となっていたバグが修正されたとのことです。
個人的にもWindows 10 22H2 (19045.4780) で上のVF版が動作することを確認しました。
なおVF版のアーカイヴに同梱されているテストHTMLには、Chromium系ブラウザでは縦書き時に回転しないようなことが書いてありますが、今はChromium系ブラウザでも回転します。
欧文グリフについて
源ノ角ゴシックに含まれる欧文グリフは、Source Sans ProというOpen Sourceフォントのグリフを加工したものです(参考記事)。このSource Sans Pro(以下SSP)には源ノ角ゴシックにない文字が多く含まれています。
そうした文字の一部を霧ゴシックに取り込むため、霧ゴシックのversion 2.100以降では、SSPのレポジトリで公開されているvariableフォント用のソースから直接源ノ角ゴシックと同じウェイトのグリフを作り出し、ラテン・ギリシア・キリルなどいわゆる欧文文字についてはそちらのものに差し替えています。
大元のグリフデータは同一であるものの、AdobeがSSPのグリフをどのように加工して「源ノ角ゴシックの欧文グリフ」としたのか具体的な手順は公開されていないこともあり、源ノ角ゴシックに含まれている欧文グリフと、霧ゴシックに含まれているそれとは完全には一致していません。ピタリと重なるグリフもあれば、わずかにずれが見られるグリフもあります。
既知の問題
- CID+661 (U+2015) を複数並べても線が繋がりません。次のリリースで直す予定です。
フォントの改訂履歴
- 4.112 (20220204):
- 従来 ‼ (U+203C), ⁇ (U+2047), ⁈ (U+2048), ⁉ (U+2049) が全角幅ではなかったために縦書き時に左へ寄ってしまっていた問題を修正。
- その他、霧明朝更新時に気づいた問題の修正など。
- 4.111 (20211123):
- ギリシア文字・キリル文字からダイアクリティクス用のアンカを削除。全角幅に変更したことにより位置情報がずれてしまうためです。ただしIPA記号としても使われるβ, θ, χの3文字のみは残してあります。
- VF版のHeavyで1000 upemを超えてしまうギリシア文字・キリル文字の調整(マスターを共有しているためLight-Regular-Bold版も影響を受けます)。
- 4.111 (20211122): Variable font版の試作品をリリース。
- 4.110 (20210911):
- U+1B001/𛀁のデザインを調整。
- U+03C2 (CID+16222) も全角幅に変更(4.100での対応漏れ)。
- イタリック版のみ:nameテーブルの中に Italic という文字列を追加。
- 4.100 (20210529):
- ベースフォントを源ノ角ゴシックJP 2.004に更新。2.002→2.003でアウトラインに微細な変更があったことを受けて、「きぎき゚さざ」用のグリフについては2.004に含まれるグリフを基にして作り直しました。
またこの機に「𛀀𛀁」のグリフデザインも少し調整しました。
- ギリシャ文字・キリル文字のグリフを全角幅に変更。OpenTypeのpalt機能を適用すると、本来の(プロポーショナルな)幅で表示されます。
- 4.010 (20201116):
- ベースフォントを源ノ角ゴシックJP 2.002に更新。
- ダイアクリティクスを多段に積み重ねることが出来るようにするためのアンカーを増補。
- 4.000 (20201031):
- ラテン、ギリシア、キリルおよびラテンのイタリック体など約1000グリフを追加。
- ダイアクリティクスを合成するためのアンカーを追加(主にIPA記号用)。
- 声調記号 (U+302A~U+302D) を削除。
- 3.011 (20200912): フォント内部の整理。
- 3.010 (20200823):
- U+01C0, U+01C1, U+01C3を追加(JIS X 0213ではおそらくU+007C, U+2016, U+0021と包摂されたもの)。
- ラテン文字とdiacriticsとの連続を合成済みグリフに置換するためのテーブル(例:A ̀ → À)を増補。
- 3.000 (20200819):
- Version を3.000に(CID番号を再割り当てしたことによるもの。本当は前版でメジャー番号を上げるべきでした)。
- IPA公式チャートに従い、ContourのRising-fallingのUnicode表現をuni02E7+uni02E6+uni02E7からuni02E7+uni02E6+uni02E8に変更。
- 2.200 (20200814):
- ベースフォントを源ノ角ゴシックJP 2.001に更新。
- 欧文グリフのベースフォントをSource Sans Pro 2.050(源ノ角ゴシックJP 2.001リリース時の最新版と思われるもの)に更新。
従来自前で用意していたグリフのうち、ſがこの版のSSPには含まれていましたので、自前で用意したものからSSP由来のものに切り替えました。
- CIDの並びをAdobe-Japan1-7の上位互換に変更。
- U+21B9(キーボードのタブ記号・↹)のグリフが左右逆になっていたのを修正(源ノ角ゴシック由来のバグ)。
- 合成用濁点 (U+3099)、同半濁点 (U+309A)、囲み用白丸と白い四角形(U+20DDとU+20DE)に対して縦書き用グリフを追加。
源ノ角ゴシックではvertとGPOSとを組み合わせることにより、これらの既定グリフ(横書き時に使われるもの)を縦書き時には右上へ移動させて合成を実現しようとしているのですが、このようなvertの使い方はOpenType仕様書に記載がなく、期待通りの動作をする環境は少ないのではないかと思われます。霧ゴシックでは従来からあるGSUBを使った方法で適切なグリフに切り替わるようにしました。
- 2.101 (20181231):
- 横書き時、欧文用の三点リーダが使われてしまうことがある問題に対処しました。
源ノ角ゴシックのfeatureファイル(フォントの設定ファイル)では、「三点リーダがラテン・ギリシア・キリル文字とともに使われる時、グリフを既定の…(ボックス真ん中に点)から欧文用の...(ベースライン付近に点)に切り替える、ただし日本語環境ではこの切り替えをしない」という設定になっているのですが、Windowsではこれがうまく機能せず、日本語の文書でも欧文用の...になってしまうことがしばしばありましたため、この切り替え機能自体を無効化しました。
- U+FFF9~U+FFFB、U+FDD0~U+FDD2にグリフを追加しました。
- 2.100 (20181211): Latin, IPA文字などを中心に248文字追加。
- 2.000 (20181203): ベースフォントを源ノ角ゴシックJP 2.000に更新。これに合わせて次の変更を行いました。
- 源ノ角ゴシックの仮名文字グリフに変更が加えられたことを受けて、霧ゴシックが独自に追加している𛀀𛀁、グリフに変更を加えている「きぎき゚さざ」の作り直し。
- PostScript名をKiriSansからKiriGoに変更。
また源ノ角ゴシック側でスタイルリンクが有効化されたことに伴い、霧ゴシックでも次の点が変わりました。
- 霧ゴシック 1.00x では Regular と Bold とが別のフォント扱いされていましたが、2.000では同じ「霧ゴシック」のウェイト違いと認識されるようになりました。これにより、例えば従来ならWindowsのフォント選択ダイアログにおいて「霧ゴシック Regular」「霧ゴシック Bold」と2つ別々に表示されていたものが、2.000以降は単に「霧ゴシック」とだけ表示され、これを選択すると通常は Regular のグリフが表示され、ワープロソフトなどで太字 (Bold) 指定をすると Bold のグリフが表示されるという形になりました。
なお Light は2.000以降も従来通り別のフォント扱いされます。
ちなみに源ノ明朝は初版からスタイルリンクが有効化されていたため、霧明朝のほうは最初のリリース版からスタイルリンクが有効になっています。
※源ノ角ゴシック 1.xxxから2.xxxへのヴァージョンアップは香港で使われる漢字に対応することが主な目的で、日本語ユーザーにとっては特に恩恵のようなものはないのですが、1) 今後霧ゴシックで追補したいと考えているグリフのうちの1つ、ς(語末用シグマ)が2.000には追加されていること、2) グリフの配置順やfeaturesファイル(OpenTypeの機能を定義するリソースファイル)が2.000では源ノ明朝のそれと似たものになっているため、改変作業をする上での注意点が共通化しやすいことなどを踏まえ、霧ゴシックのベースフォントを源ノ角ゴシック 2.000に切り替えることにしました。
- 1.007 (20170923): 次のグリフも縦書き時に向きが変わるようにしました。
- 矢印類のうち回転対象から漏れていた8グリフ(☜☝☞☟➡⬅⬆⬇)。
- U+2500~U+257Fの罫線。
※参考:Adobe-Japan1のfeaturesおよびUAX #50のデータ。
- 1.006 (20170909): 縦書き時に回転する文字に半角片仮名などを追加。
- 1.005 (20170902): マッピングデータの消し忘れにより、対応していない文字(CJKのCとK固有の文字)が無関係のグリフで表示されてしまうことがあったのを修正。
- 1.004 (20170527): フォント名をDesiete角ゴシックから霧ゴシックに変更。
- 1.004 (20170426): Source Han Sans JP 1.004ベースに更新。
- Lightのみ「さざ」の縦書き用グリフが、横書き時にも使われるようになっていた問題を修正。
- U+1B000, U+1B001に縦書き用グリフを追加。
- Wordで縦書き時に行間が開きすぎる問題に対処するため2倍ダーシ用グリフも削除(3倍は既に削除済み)。2倍3倍ダーシ用グリフが削除された状態をFontBBoxの数値に反映。
- PDFに埋め込んだ時に文字のコピーや検索が可能になるようおまじないを追加。
- 1.001 (20140914): Source Han Sans JP 1.001ベースに更新。SHS側で仮名のグリフデザインが微調整されたことを受け、本フォント側も「き」「さ」のデザインを調整。日本語環境ではフォント名が「Desiete角ゴシック」と表示されるように修正。
- 1.000 (20140803): 最初のリリース(Source Han Sans JP 1.000ベース)。