5-B4. 霧明朝
霧明朝
「霧明朝」は、AdobeのOpen Sourceフォント、源ノ明朝(英語名:Source Han Serif)の派生フォントです。次のような変更が加えられています。
- Kana Supplementブロックの𛀀𛀁(Unicode値:U+1B000~U+1B001)用のグリフなどを追加。
- CIDをAdobe-Japan1-7準拠に再割り当て。Adobe-Japan1-7にない文字についてはCID+23060以降に配置(この関係でROSは Adobe-Identity-0 になっています)。
- プロポーショナルなラテン文字や半角片仮名などに対して、縦書き用の回転済みグリフを追加。
- 欧文文字の増補。
- Version 1.100にて次の252文字を追加:
- 源ノ明朝において不足しているJIS X 0213の文字(175文字):
æ̀ Ą ą Ć ć Ĉ ĉ Č č Ď ď Ę ę Ĝ ĝ Ĥ ĥ ħ Ĵ ĵ Ĺ ĺ Ľ ľ Ł ł ŋ Ő ő Ŕ ŕ Ř ř Ś ś Ŝ ŝ Ş ş Š š Ţ ţ Ť ť Ů ů Ű ű Ź ź Ż ż Ž ž Ɠ ǂ ǽ ɐ ɒ ɓ ɔ ɔ̀ ɔ́ ɕ ɖ ɗ ɘ ə ə̀ ə́ ɚ ɚ̀ ɚ́ ɜ ɞ ɟ ɠ ɤ ɥ ɦ ɧ ɨ ɬ ɭ ɮ ɯ ɰ ɱ ɲ ɳ ɵ ɹ ɺ ɻ ɽ ɾ ʁ ʂ ʃ ʄ ʈ ʉ ʊ ʋ ʌ ʌ̀ ʌ́ ʍ ʎ ʐ ʑ ʒ ʔ ʕ ʘ ʝ ʡ ʢ ˈ ˌ ː ˑ ˘ ˛ ˝ ˞ ˥ ˥˩ ˦ ˧ ˨ ˩ ˩˥ ̀ ́ ̂ ̃ ̄ ̆ ̈ ̋ ̌ ̏ ̘ ̙ ̚ ̜ ̝ ̞ ̟ ̠ ̤ ̥ ̩ ̪ ̬ ̯ ̰ ̴ ̹ ̺ ̻ ̼ ̽ ͡ ὰ ά ὲ έ ‾ ‿ ⅓ ⅔ ⅕
- JIS X 0213が対応し損ねたと思われるもの(6文字):
ɑ̀ ɑ́ ɛ̀ ɛ́ ʛ ͜
- Full IPA Chart対応用の国際音声記号(30文字):
ɛ ɢ ɣ ɪ ɴ ɶ ɸ ʀ ʏ ʙ ʜ ʟ ʰ ʲ ʷ ʼ ˠ ˡ ˤ ̊ ᷄ ᷅ ᷈ ⁿ ⱱ ꜛ ꜜ ˧˥ ˩˧ ˧˦˨
- ラテン語対応用(24文字):
Ā̆ ā̆ Ĕ ĕ Ē̆ ē̆ Ĭ ĭ Ī̆ ī̆ Ō̆ ō̆ Ū̆ ū̆ Ÿ Ȳ ȳ Y̆ y̆ Ȳ̆ ȳ̆ Ǽ Œ́ œ́
- 他(15文字):
İ ı ſ ǵ ȷ ʻ ˆ ˚ ˜ ̅ ̇ ̧ ̨ ̶ 0︀(slashed-zero)
- Version 2.010以降にて次の3文字を追加:
- Full IPA Chart対応用の国際音声記号:
ǀ ǁ ǃ
- Version 3.000にて次の113文字を追加:
- Adobe-Japan1-7に含まれているラテン・ギリシア・キリル文字など:
ˁ ꞵ ꭓ Ċ ċ Ė ė Ğ ğ Ġ ġ Ģ ģ Ħ Į į IJ ij Ķ ķ ĸ Ļ ļ Ŀ ŀ Ņ ņ ʼn Ŋ Ŗ ŗ Ŧ ŧ Ų ų Ŵ ŵ Ŷ ŷ ΄ ΅ ⁄ ⁰ ⁵ ⁶ ⁷ ⁸ ⁹ ₀ ₁ ₂ ₃ ₄ ₅ ₆ ₇ ₈ ₉ ⅛ ⅜ ⅝ ⅞ ∆ ∏ ≤ ≥ ◊ Ά Έ Ή Ί Ϊ Ό Ύ Ϋ Ώ ά έ ή ί ϊ ΐ ό ύ ϋ ΰ ώ Ђ Ѓ Є Ѕ І Ї Ј Љ Њ Ћ Ќ Ў Џ ђ ѓ є ѕ і ї ј љ њ ћ ќ ў џ
- イタリック体グリフを追加(Version 3.000以降)。
- 合成用濁点 (U+3099)、同半濁点 (U+309A)、囲み用白丸と白い四角形(U+20DDとU+20DE)に対して縦書き用グリフを追加。VORG対応環境では、これらは直前の(真上の)文字に合成されます。
- ギリシア文字・キリル文字を全角幅に変更。OpenTypeのpalt機能を適用すると本来の幅で表示されます。
変更はすべてソースに対して行い、その後Adobe製ツール (AFDKO)を用いてビルドしましたので、前記の変更点以外は機能・品質とも源ノ明朝と同じです。グリフのヒンティング情報や文字詰めの情報などはすべて源ノ明朝のものをそのまま継承しています。
ちなみにGoogleよりNoto Serif CJKという名称でリリースされているフォントは、名前が異なるだけで中身は源ノ明朝 (Source Han Serif) の同等品です。
Download
本フォントは源ノ明朝 (Source Han Serif) と同じSIL Open Font License 1.1の下、提供されます。
- 上記ライセンスに同意して霧明朝 (4.002) をダウンロード(Source Han Serif JP 2.001ベース):
イタリック版で実際にイタリック体グリフが表示されるのは、「U+017Fまでの文字」および「Adobe-Japan1-7にイタリック体グリフが含まれている文字」のみです。ギリシア文字・キリル文字などその他の文字はイタリック体では表示されません。
ローマン版もイタリック版もグリフ集合は共通です。OpenTypeのital機能が使えるソフト(InDesignの「欧文イタリック」など)でご利用の場合は、別途イタリック版をダウンロードする必要はありません。
Variable font版
霧明朝のvariable font(可変フォント。以下VF)版です。2022年現在Adobeの小塚明朝・小塚ゴシックにもまだVF版はないようですので、Adobe-Japan1-7互換のCIDを持つvariable fontとしては霧ゴシックVFについで世界で2番目かもしれません。
2024/09/08追記:源ノ角ゴシックのissue#290によりますと、Windows 10/11でVF版が使えない原因となっていたバグが修正されたとのことです。
個人的にもWindows 10 22H2 (19045.4780) で上のVF版が動作することを確認しました。
なおVF版のアーカイヴに同梱されているテストHTMLには、Chromium系ブラウザでは縦書き時に回転しないようなことが書いてありますが、今はChromium系ブラウザでも回転します。
欧文グリフについて
霧ゴシック同様に、霧明朝もversion 3.000以降、欧文文字については源ノ明朝付属のグリフではなく、源ノ明朝の派生元であるSource Serif Pro(以下SSP)から作り出したグリフを使うようにしました。
ただし霧ゴシック←→源ノ角ゴシック間に比べますと、霧明朝←→源ノ明朝間は欧文グリフの差異がやや大きめです。そのため従来の(源ノ明朝付属の)欧文グリフを含むversion 2最終版も、当面の間ダウンロードできるようにしました。
フォントの改訂履歴
- 4.002 (20220214): U+2015を複数並べた時に線が途切れぬように変更(源ノ明朝がヴァージョン2にアップデートされた際にグリフが変更され、それを受けて霧明朝4.000以降では線が繋がらなくなってしまっていました。源ノ明朝自身は2倍および3倍ダーシに関しては専用グリフを持っているため、U+2015を4つ以上並べない限りは「線が繋がらない」という問題は発生しません)。
- 4.001 (20220204): 源ノ明朝由来の仮名グリフについてはカスタマイズをやめ、そのまま使うように変更。
- 4.000 (20220202):
- ベースフォントを源ノ明朝JP 2.001に更新。1.001から2.000へのアップデート時に欧文グリフが作り直されたこと(おそらくSource Serif Pro 2ベースからSource Serif 4ベースに変更)と、縦書き用の仮名グリフの幅が狭められたことなどを反映して、霧明朝で独自に追加したり改変したりしているグリフについても同等の変更が加えられています。
- イタリック版のみ:nameテーブルの中に Italic という文字列を追加。
- 従来 ‼ (U+203C), ⁇ (U+2047), ⁈ (U+2048), ⁉ (U+2049) が全角幅ではなかったために縦書き時に左へ寄ってしまっていた問題を修正。
- 試作扱いでvariable font版を追加。
- 3.100 (20210821):
- ギリシャ文字・キリル文字のグリフを全角幅に変更。OpenTypeのpalt機能を適用すると、本来の(プロポーショナルな)幅で表示されます。
なおこの変更に際して次の文字はグリフの幅が従来より狭められています:U+040A, U+0428, U+0429(以上全ウェイト)、U+0389, U+0416, U+042E(以上Boldのみ)。
- Adobe-Japan1用のGSUBをデータを増補。
- 3.000 (20201111):
- ラテン、ギリシア、キリルおよびラテンのイタリック体など約1000グリフを追加。
- ダイアクリティクスを合成するためのアンカーを追加(主にIPA記号用)。
- 声調記号 (U+302A~U+302D) を削除。
- 2.030 (20201030): Version 2系最終版としてスナップショットを作成。
- 2.010 (20200823):
- U+01C0, U+01C1, U+01C3を追加(JIS X 0213ではおそらくU+007C, U+2016, U+0021と包摂されたもの)。
- ラテン文字とdiacriticsとの連続を合成済みグリフに置換するためのテーブル(例:A ̀ → À)を増補。
- 2.000 (20200819):
- Version を2.000に(CID番号を再割り当てしたことによるもの。本当は前版でメジャー番号を上げるべきでした)。
- IPA公式チャートに従い、ContourのRising-fallingのUnicode表現をuni02E7+uni02E6+uni02E7からuni02E7+uni02E6+uni02E8に変更。
- 1.300 (20200814):
- CIDの並びをAdobe-Japan1-7の上位互換に変更。
- U+21B9(キーボードのタブ記号・↹)のグリフが左右逆になっていたのを修正(源ノ明朝由来のバグ)。
- 合成用濁点 (U+3099)、同半濁点 (U+309A)、囲み用白丸と白い四角形(U+20DDとU+20DE)、声調記号 (U+302A~U+302D) に対して縦書き用グリフを追加。
源ノ明朝ではvertとGPOSとを組み合わせることにより、これらの既定グリフ(横書き時に使われるもの)を縦書き時には右上へ移動させて合成を実現しようとしているのですが、このようなvertの使い方はOpenType仕様書に記載がなく、期待通りの動作をする環境は少ないのではないかと思われます。霧明朝では従来からあるGSUBを使った方法で適切なグリフに切り替わるようにしました。
- 1.201 (20181231):
- 横書き時、欧文用の三点リーダが使われてしまうことがある問題に対処しました。
源ノ明朝のfeatureファイル(フォントの設定ファイル)では、「三点リーダがラテンアルファベットとともに使われる時、グリフを既定の…(ボックス真ん中に点)から欧文用の...(ベースライン付近に点)に切り替える、ただし日本語環境ではこの切り替えをしない」という設定になっているのですが、Windowsではこれがうまく機能せず、日本語の文書でも欧文用の...になってしまうことがしばしばありましたため、この切り替え機能自体を無効化しました。
- U+FFF9~U+FFFB、U+FDD0~U+FDD2にグリフを追加しました。
- 1.200 (20181203): 変更点は次の通りです。
- U+02C7, U+02D9をそれぞれU+030C, U+0307と同じ形に変更。
- マクロン付き母音にブレヴェを合成した12グリフ (Ā̆ ā̆ Ē̆ ē̆ Ī̆ ī̆ Ō̆ ō̆ Ū̆ ū̆ Ȳ̆ ȳ̆) のブレヴェの位置を調整。
- PostScript名をKiriSerifからKiriMinに変更。ヴァージョン番号の上がり方が大きめなのはこのためです。
- 1.103 (20170923): 次のグリフも縦書き時に向きが変わるようにしました。
- 矢印類のうち回転対象から漏れていた8グリフ(☜☝☞☟➡⬅⬆⬇)。
- U+2500~U+257Fの罫線。
※参考:Adobe-Japan1のfeaturesおよびUAX #50のデータ。
- 1.102 (20170909): 縦書き時に回転する文字に半角片仮名などを追加(回転済みグリフおよびマッピングの追加)。
- 1.101 (20170902):
- 源ノ明朝由来のcmapデータの消し忘れにより、対応していない文字(CJKのCとK固有の文字)が無関係のグリフで表示されてしまうことがあったのを修正。
- 日本語環境では使われない数字用グリフを削除。
- 1.100 (20170826): Latin, IPA文字などを中心に252文字追加。
- 1.001 (20170527): フォント名をDesiete明朝から霧明朝に変更。
- 1.001 (20170513): Source Han Serif JP 1.001ベースに更新。SHS側で行われた「ね」のグリフに対する微調整を、本フォントの改変グリフにも反映させました。
- 1.000 (20170422): 最初のリリース(Source Han Serif JP 1.000ベース)。
今後の予定
源ノ明朝 2.002がリリースされていますが、縦書き用の小さい仮名の高さがおかしいという問題が報告されていますので、アップデートはしばらく見合わせます。
リリースノートによりますと、日本語環境に影響ある変更のうち目を引くものは、「岸」のグリフがdisunifyされてversion 2.000より前のものに戻された、という点ぐらいです(2.000以降、「山」の左下の部分が簡体字風になっていた)。
Version 2最終版
霧明朝に含まれる欧文グリフは、Version 2までと3以降とで少しアウトラインが変わっています。
- Version 2まで:源ノ明朝付属の欧文グリフ(Source Serif Pro をAdobeが独自に加工したもの)と、前記グリフと調和するように当方で作ったラテン文字・IPA記号グリフとを組み合わせたものを使用。
- Version 3以降:Source Serif Pro (SSP) に含まれているグリフと調和するようIPA記号グリフを自作し、それらとSSPに元からあるものとをまとめて、源ノ明朝の欧文グリフと同じサイズになるよう加工したものを使用。
従来の欧文グリフを含む版は下のリンクよりダウンロードできます。
※ 7-Zip版もzip版もアーカイヴの中身は同じです。