2-7. 助詞・形容動詞語尾・「や・どす」のアクセント

目次


2-7-1 助詞にもアクセントがある

 名詞のアクセント紹介に続いては、名詞とは切っても切り離せぬ「てにをは」こと「助詞」のアクセントについてのご紹介です。
 意外に思われるかもしれませんが、京都言葉では助詞も固有のアクセントを持っています。

 ただし助詞固有のアクセントが現れるのは、直前の語または文節が無核(音の下がり目なし)である場合のみです。「花/●○」「春/○◐」「これこそ/●●●○」のような有核(音の下がり目あり)の語や文節に付く場合は、助詞の部分は低く平らにならされて発音されるのが普通です(例:「花/●○」「春/○◐」「これこそ/●●●○」)。

 ところで文法上、形容動詞の活用語尾と呼ばれているものや、断定の助動詞「や・どす」も、元をたどると実は「助詞+何か」が融合して出来上がったものです。

 そこで本章ではこれら(形容動詞の活用語尾や断定の助動詞「や・どす」)のアクセントも併せてご紹介します。


2-7-2 助詞・形容動詞語尾・「や・どす」のアクセント一覧表

 付属語部分のアクセントを分かりやすくするため、低起式の語例にもあえて遅上がりを適用させず示します。

表1 助詞アクセント一覧
高起式無核(●...●型)の
語に付いた例
低起式無核(○...●型)の
語に付いた例
断定の助動詞(兼、形容動詞語尾)
●●‐ ○●‐
やった○○○ やった●●‐○○○ やった○●‐○○○
やろう●○○ *1 やろう●●‐●○○ やろう○●‐●○○
どす/です●● どす●●‐●● どす○●‐●●
どした/でした●○○ どした●●‐●○○ どした○●‐●○○
どすやろ●●●○ どすやろ●●‐●●●○ どすやろ○●‐●●●○
どっしゃろ●●●○ どっしゃろ●●‐●●●○ どっしゃろ○●‐●●●○
でしょう●●● でしょう●●‐●●● でしょう○●‐●●●
なら(ば)○○(○) なら●●‐○○ なら○●‐○○
  • *1 「や」「やった」に引かれた○○○型も併存していてかなり使われる。
    「水やろう/●●○○○」「海やろう/○●○○○」
形容動詞の連体形語尾
無駄●●‐ ○●‐
格助詞のうち形容動詞の連用形語尾も兼ねるもの
無駄・水 ●●‐ ・海 ○●‐
無駄・水 ●●‐ ・海 ○●‐
格助詞
●●‐ ○●‐
●●‐ ○●‐
の(連体) ●●‐‐○● ○●‐‐○●
の(準体言) ●●‐ ○●‐
●●‐ ○●‐
と(ともに) ●●‐‐●○ ○●‐‐●●
と(引用) いう●●‐‐○○ いう○●‐‐○○
って○○ って●●‐○○ って○●‐○○
から●● *2 から●●‐●● から○●‐●●
より○○ より●●‐○○ より○●‐○○
にて●○ にて●●‐●○ にて○●‐●○
には●● *3 には●●‐●● には○●‐●●
にも●○ にも●●‐●○ にも○●‐●○
では●● *3 では●●‐●● では○●‐●●
でも●○ でも●●‐●○ でも○●‐●○
からは●●● からは●●‐●●● からは○●‐●●●
からも●●○ からも●●‐●●○ からも○●‐●●○
  • *2 ●○と発音するのは×。
  • *3 ●○と発音するのはやや新しい。
係助詞
●●‐ ○●‐
●●‐ ○●‐
こそ●○ こそ●●‐●○ こそ○●‐●○
並立助詞
●●‐‐●○ ○●‐‐●○
●●‐‐●○ ○●‐‐●○
副助詞
さえ●○ さえ●●‐●○ さえ○●‐●○
すら●○ すら●●‐●○ すら○●‐●○
など○○ など●●‐○○ など○●‐○○
なんて○○○ なんて●●‐○○○ なんて○●‐○○○
まで○○ まで●●‐○○ まで○●‐○○
やら○○ やら●●‐○○ やら○●‐○○
かて *4●○ かて●●‐●○ かて○●‐●○
  • *4 接続助詞としても使われる。
間投助詞
●●‐ ○●‐
●●‐ ○●‐
終助詞(名詞に付くもの)
●●‐ ○●‐
●●‐ ○●‐
かも●○ かも●●‐●○ かも○●‐●○
かな○○ かな●●‐○○ かな○●‐○○
かい(な)●○(○) かい(な)●●‐●○(○) かい(な)○●‐●○(○)
終助詞(動詞・助動詞などに付くもの)
●または○ する●●‐
●●‐
来る○●‐
○●‐
言い●●‐ 読み○●‐
がな するがな●●‐○○ 来るがな○●‐○○
する●●‐ 来る○●‐
で(ぜ) する●●‐ 来る○●‐
いな *5○○ 言うていな●●●‐○○ 読んでいな○○●‐○○
  • *5 疑問代名詞+助詞の後にも付く。「誰がいな/●●●‐○○」「なんでいな/○○●‐○○
接続助詞
ながら●●● 言いながら●●‐●●● 書きながら○●‐●●●
もて●● 言いもて●●‐●● 書きもて○●‐●●
けれど(も)●○○(○) するけれど●●‐●○○ 来るけれど○●‐●○○
けど(も)●○(○) するけど●●‐●○ 来るけど○●‐●○
する●●‐ 来る○●‐
さかい(に)●○○(○) するさかい●●‐●○○ 来るさかい○●‐●○○
よって●○○ するよって●●‐●○○ 来るよって○●‐●○○

 上の表のうち、「へ・や・も」のように「直前の文節の終わり方がどうであれ、助詞自身は常に低く始まる」という付き方のことを「低接」と言います。一方、「が・を・は」のように「直前の文節が高く終わる(無核)ならそれを受けて助詞自身も高く始まり、低く終わる(有核)ならそれを受けて助詞自身も低く始まる」という付き方のことを「順接」と言います。

表2 順接と低接
無核の語に付く例
(例:上;●●)
有核の語に付く例
(例:山;●○)
備考
順接の助詞
(例:から)
うえ+から
●●+●●
やま+から
●○+○○
無核の語に付くなら高く始まり、
有核の語に付くなら低く始まる。
低接の助詞
(例:へ)
うえ+へ
●●+○
やま+へ
●○+○
前がどうあれ常に低く始まる。

 助詞「の」だけは少し変わった特性を持っていて、基本的には順接なのですが、H-2型(高起式かつアクセント核が最後から2拍目にある音調)の名詞に付くと、しばしば文節全体が高く平らなアクセントになります。

 余談ですが、かつての京都言葉には、順接・低接の他に、次のような付き方をする助詞も存在しました。

2-7-2-1 助詞が連続する場合の音調

 先ほどの表1の中にも少し例が出ていますが、「これ+から+は+なあ」のように助詞が連続する場合も、直前が高く終わっている限りはそれに続く助詞の固有アクセントがそのまま現れます。

助詞が連続する場合のアクセント例

  • それ‐から‐は‐な:●●‐●●‐●‐◐
  • それ‐こそ‐は‐な:●●‐●○‐○‐○

 最初の例では無核の語が続くため、最後の「な」まで助詞固有のアクセントがそのまま現れているのに対して、2つめの例では「こそ」の途中で音程が下がっているので、それ以降は助詞固有のアクセントが現れなくなっています。

2-7-2-2 1拍名詞に助詞が付く場合の音調

「絵・木・手・火」など◑型の1拍名詞に順接の助詞が付くと、名詞部分は○型に変化します。例えば「木」は単独なら◑型ですが、順接の助詞が付くと「木‐を/○‐●」のようになります。
 一方これら◑型の1拍名詞に低接の助詞が付いた時は、「木‐も/◑‐○」のように原則通りの音調になります。


2-7-3 「でしょう」のアクセント

 上の表には入れてありませんが、推量の「~でしょう」は●○○や○○○というアクセントでも発音されます。
 もともと「何々でしょう」という言い方は、「何々ございましょう」が約まったものと考えられています。ゆえに「何々でしょう」の「で」は元々助詞の「で」ですので、発音上の区切り位置は本来なら「で」の次に来るはずです。

表3 です・でした・でしょうの本来の区切り位置
「そうで‐す /●● (← そう‐ございま /●●‐●●●●)」
「そうで‐した /●●○○ (← そう‐ございました /●●‐●●●○○○)」
「そうで‐しょう /●●●● (← そう‐ございましょう /●●‐●●●●●●)」

 しかし実際には、「何々‐やろう」という言い方に引きずられて、「そう‐でしょう」というふうに、「でしょう」の前に区切りを置く人も多く、そのような場合次のようなアクセントになりやすいようです。

表4 やろうに引きずられた区切り位置
「そう‐でしょう/●●‐●○○・●●‐○○○」
「そう‐やろう/●●‐●○○・●●‐○○○」

 このような「解釈の差による発音の違い」が生じてしまうあたりに、この「~でしょう」という表現がもとは京都になかったということ、そしてこの言い方が口伝えではなく、共通語で書かれた文章によって京都にもたらされたものであるということが現れています。


Valid HTML5