付表2 動詞の活用形アクセント表(近世京都編)

目次

目次表
基本2類 変種
第1類 第2類 第3類
2
変活 する/●● 来る/○● (該当語なし)
1段 着る/●●類 見る/○●類
5段 言う/●●類 書く/○●類
3
変格 死ぬる/●●●類 (該当語なし)
1段 上げる/●●●類 下げる/●○○類
5段 上がる/●●●類 下がる/●○○類 歩く/○●●類
4
1段 教える/●●●●類 預ける/●●○○類 抱える/○●●●類
5段 教わる/●●●●類 預かる/●●○○類 関わる/○●●●類
核固定類: おる/●○できる/●○○ござる/●○○率いる/●○○○宣う/●○○○、 ……

註:当頁で用いている「第3類」という呼び方は充分に確立されたものではありません。書物によっては「『歩く』類・『抱える』類」のように呼んで、あえて「第n類」という名前を与えていないこともあります。


近世京都における動詞の活用形アクセント表

 近世京都における動詞の活用形アクセントを簡略表にまとめました。現代京都アクセントはもちろん、その周辺部のアクセントも大抵はこれを源流としています。
(少し表が横に長いので、お使いの画面設定によっては段組が崩れてしまうかもしれません

 なお3拍以上の未然形+助動詞ナンダの形の音調は資料が皆無に近い状態のため推測によっています(詳細は『方言・音声研究』第6号収載の「京阪式アクセントにおける否定諸形の音調比較」という拙論に記載されています)。

1類の動詞

 1類動詞は、動詞部分が1拍ならH0型かH1型かに、2拍以上ならH0型かH-2型かになるのが特徴です。

1類動詞・活用形アクセント
連用形が 1拍 2拍 3拍 4拍 後続する
主な助詞や
助動詞
連体形が 2拍 3拍 4拍
活用形\語 サ変
する
1段
着る
5段
言う
ナ変
死ぬる
1段
上げる
5段
上がる
1段
教える
5段
教わる
終止
連体
●●
する
●●
きる
●●
いう
●●●
しぬる
●●●
あげる
●●●
あがる
●●●●
おしえる
●●●●
おそわる

終止+ナ
(禁止)
●○
すナ
●○○
するナ
●○○
きるナ
●○○
いうナ
●●○○
しぬるナ
●●○○
あげるナ
●●○○
あがるナ
●●●○○
おしえるナ
●●●○○
おそわるナ

已然
仮定*1
●○‐
すれ‐
●○‐
きれ‐
●○‐
いえ‐
●●○‐
しぬれ‐
●●○‐
あげれ‐
●●○‐
あがれ‐
●●●○‐
おしえれ‐
●●●○‐
おそわれ‐
‐バ/○
‐ドモ/○○

「イ」


●○
あげ

●●○
おしえ





●○
いえ
●○
しね

●●○
あがれ

●●●○
おそわれ


基本
*2
*2
●○
いい
●○
しに
●○
あげ
●●○
あがり
●●○
おしえ
●●●○
おそわり

過去
完了
●‐
し‐
●‐
き‐
●○‐
いう‐
●○‐
しん‐゛
●○‐
あげ‐
●●○‐
あがっ‐
●●○‐
おしえ‐
●●●○‐
おそわっ‐
‐タ/○
‐タラ/○○
‐タリ/○○
+テ
●○
いう
●○
しん
●○
あげ
●●○
あがっ
●●○
おしえ
●●●○
おそわっ

未然
●‐
せ‐
●‐
き‐
●●‐
いわ‐
●●‐
しな‐
●●‐
あげ‐
●●●‐
あがら‐
●●●‐
おしえ‐
●●●●‐
おそわら‐
‐ズ/○
‐イデ/○○
‐ント/○○
‐ナンダ/○○○
‐ナンダラ/○○○○

否定
●●
せん
せぬ
●●
きん
きぬ
●●●
いわん
いわぬ
●●●
しなん
しなぬ
●●●
あげん
あげぬ
●●●●
あがらん
あがらぬ
●●●●
おしえん
おしえぬ
●●●●●
おそわらん
おそわらぬ

否定
已然
●●‐
せね‐
●●‐
きね‐
●●●‐
いわね‐
●●●‐
しなね‐
●●●‐
あげね‐
●●●●‐
あがらね‐
●●●●‐
おしえね‐
●●●●●‐
おそわらね‐
‐バ/○
‐ドモ/○○
意向
推量
●●
しょう
●●●
きよう
●●●
いおう
●●●
しのう
●●●
あぎょう
●●●●
あげよう
●●●●
あがろう
●●●●
おしよう
●●●●●
おしえよう
●●●●●
おそわろう

使役
*3*4
●●
さす
●●●
せさす
●●●
きさす
●●●
いわす
●●●
しなす
●●●●
あげさす
●●●●
あがらす
●●●●●
おしえさす
●●●●●
おそわらす

受動
自発
尊敬
*3
●●●
される
●●●●
せられる
●●●●
きられる
●●●●
いわれる
●●●●
しなれる
●●●●●
あげられる
●●●●●
あがられる
●●●●●●
おしえられる
●●●●●●
おそわられる

転成
名詞
●●
いい
●●
しに
●●
あげ
●●●
あがり
●●●
おしえ
●●●●
おそわり

語尾変化
パターン
ab

2類の動詞

 2類動詞は、動詞部分が1拍ならH0型かH1型に、2拍ならL0型かL2型に、3拍以上ならH-3型になるのが特徴です。
 2類動詞の諸活用形のうち動詞部分が3拍以上あるものは、体系変化の影響を受けて「○○●・○○◐→●○○」のようなアクセント変化を経ています。このため2類動詞のアクセント体系は一見分かりにくくなっていますが、「●○○」は元々「○○●または○○◐」であったこと、「●●○○」は元々「○○○●または○○○◐」であったことを踏まえると理解しやすくなります。

2類動詞・活用形アクセント
連用形が 1拍 2拍 3拍 4拍 後続する
主な助詞や
助動詞
連体形が 2拍 3拍 4拍
活用形 カ変
来る
1段
見る
5段
書く
1段
下げる
5段
下がる
1段
預ける
5段
預かる
終止
連体
○●
くる
○●
みる
○●
かく
●○○
さげる
●○○
さがる
●●○○
あずける
●●○○
あずかる

終止+ナ
(禁止)
●○
くナ
○●○
くるナ
○●○
みるナ
○●○
かくナ
●○○○
さげるナ
●○○○
さがるナ
●●○○○
あずけるナ
●●○○○
あずかるナ

已然
仮定*1
○●‐
くれ‐
○●‐
みれ‐
○●‐
かけ‐
●○○‐
さげれ‐
●○○‐
さがれ‐
●●○○‐
あずけれ‐
●●○○‐
あずかれ‐
‐バ/○
‐ドモ/○○

「イ」

○●
さげ

●○○
あずけ





○◐
かけ

●○○
さがれ

●●○○
あずかれ


基本
○◐*2
かき
○◐*2
さげ
●○○
さがり
●○○
あずけ
●●○○
あずかり

過去
完了
●‐
き‐
●‐
み‐

○●‐
さげ‐
●○○‐
さがっ‐
●○○‐
あずけ‐
●●○○‐
あずかっ‐
‐タ/○
‐タラ/○○
‐タリ/○○



○●‐
かい‐




‐タ/●
‐タラ/●○
‐タリ/●○
+テ
○●*3
かい
○●
○●
さげ
●○○
さがっ
●○○
あずけ
●●○○
あずかっ

未然
●‐
こ‐
●‐
み‐
○●‐
かか‐
○●‐
さげ‐
●○○‐
さがら‐
●○○‐
あずけ‐
●●○○‐
あずから‐
‐ズ/○
‐イデ/○○
‐ント/○○
‐ナンダ/○○○
‐ナンダラ/○○○○

否定
○●
こん
こぬ
○●
みん
みぬ
●○○
かかん
かかぬ
●○○
さげん
さげぬ
●●○○
さがらん
さがらぬ
●●○○
あずけん
あずけぬ
●●●○○
あずからん
あずからぬ

否定
已然
○●‐
こね‐
○●‐
みね‐
●○○‐
かかね‐
●○○‐
さげね‐
●●○○‐
さがらね‐
●●○○‐
あずけね‐
●●●○○‐
あずからね‐
‐バ/○
‐ドモ/○○
意向
推量
○●
こう
●○○
みよう
●○○
かこう
●○○
さぎょう
●○○○
さげよう
●●○○
さがろう
●●○○
あずきょう
●●○○○
あずけよう
●●●○○
あずかろう

使役
*4*5
●○○
こさす
●○○
みさす
●○○
かかす
●●○○
さげさす
●●○○
さがらす
●●●○○
あずけさす
●●●○○
あずからす

受動
自発
尊敬
*4
●●○○
こられる
●●○○
みられる
●●○○
かかれる
●●●○○
さげられる
●●●○○
さがられる
●●●●○○
あずけられる
●●●●○○
あずかられる

転成
名詞
●?
●?
●○
かき
●○
さげ
●●○
さがり
●●○
あずけ
●●●○
あずかり

語尾変化
パターン
cdefg

3類の動詞

 この類はいわば「低起版1類動詞」です。「あり:○●」+「ゆく:●●」=「ありく・あるく:○●●」など複合動詞に由来すると考えられる語のほか、歴史的に「隠す」のように2類との間で揺れてきた語や、「答える」のように近世以降2類から転じた語もあります。
 3類の動詞はどの活用形も3拍未満にはなりません。動詞部分の音調はL0型かL-2型かになります。

3類動詞・活用形アクセント
連用形が 3拍 4拍 参考
現代京都
似非3類
下げる
後続する
主な助詞や
助動詞
連体形が 3拍 4拍
活用形 5段
歩く
1段
抱える
5段
関わる
終止
連体
○●●
あるく
○●●●
かかえる
○●●●
かかわる
○○●
さげる

終止+ナ
(禁止)
○●○○
あるくナ
○●●○○
かかえるナ
○●●○○
かかわるナ
○○●○
さげるナ

已然
仮定*1
○●○‐
あるけ‐
○●●○‐
かかえれ‐
○●●○‐
かかわれ‐
○●○‐
さげれ‐
‐バ/○
‐ドモ/○○

「イ」

○●○
かかえ

○●
さげ


○●○
あるけ

○●●○
かかわれ
○◐
さげ


基本
○●○
あるき
○●○
かかえ
○●●○
かかわり
○◐
さげ

過去
完了
○●○‐
あるい‐
○●○‐
かかえ‐
○●●○‐
かかわっ‐
○●‐
さげ‐
‐テ/○
‐タ/○
‐タラ/○○
‐タリ/○○
未然
○●●‐
あるか‐
○●●‐
かかえ‐
○●●●‐
かかわら‐
○●‐
さげ‐
‐ズ/○
‐イデ/○○
‐ント/○○
‐ナンダ/○○○
‐ナンダラ/○○○○

否定
○●●●
あるかん
あるかぬ
○●●●
かかえん
かかえぬ
○●●●●
かかわらん
かかわらぬ
○○●
●○○
さげん

否定
已然
○●●●‐
あるかね‐
○●●●‐
かかえね‐
○●●●●‐
かかわらね‐
○●○‐
さげね‐
‐バ/○
‐ドモ/○○
意向
推量
○●●●
あるこう
○●●●
かかよう
○●●●●
かかえよう
○●●●●
かかわろう
○○○●
さげよう

使役
*2*3
○●●●
あるかす
○●●●●
かかえさす
○●●●●
かかわらす
●●●●
さげさす

受動
自発
尊敬
*2
○●●●●
あるかれる
○●●●●●
かかえられる
○●●●●●
かかわられる
●●●●●
さげられる

転成
名詞
○●●
あるき
○●●*4
かかえ
○●●●
かかわり
●○
さげ

語尾変化
パターン
b-

核固定動詞

 この類の動詞はその名の通り、核が常に同じ位置に来ます。ただし用例不足により、使役形や受動形などアクセントがはっきり分からない形もあります。

核固定動詞・活用形アクセント
連用形が 2拍 後続する
主な助詞や
助動詞
連体形が 2拍 3拍
活用形 5段
居る
1段
出来る
終止
連体
●○
おる
●○○
できる

終止+ナ
(禁止)
●○○
おるナ
●○○○
できるナ

已然
仮定
●○‐
おれ‐
●○○‐
できれ‐
‐バ/○
‐ドモ/○○

「イ」

●○
でき


●○
おれ



基本
●○
おり
●○
でき

過去
完了
●○‐
おっ‐
●○‐
でき‐
‐テ/○
‐タ/○
‐タラ/○○
‐タリ/○○
未然
●○‐
おら‐
●○‐
でき‐
‐ズ/○
‐イデ/○○
‐ント/○○
‐ナンダ/○○○
‐ナンダラ/○○○○

否定
●○○
おらん
おらぬ
●○○
できん
できぬ

否定
已然
●○○‐
おらね‐
●○○‐
できね‐
‐バ/○
‐ドモ/○○
意向
推量
●○○
おろう
●○○○
できよう

転成
名詞
●●?
おり
●●
でき

語尾変化
パターン
z

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