2-8-表 形容詞の活用形アクセント一覧

目次


2拍形容詞

 次の2種類があります。

2拍形容詞の種類と主な活用形
1類「濃い」等2類「良い」等
濃い●○ 良い○●
濃う●○ 良う●○
濃かった●○○○ 良かった●○○○

 研究者によっては、2類形容詞には「類」を設けていぬケースもあります。

2拍形容詞

2拍・「濃い」類と「良い」類
活用形「濃い」「良い」
語形 アクセント 語形 アクセント
終止・連体 こい ●○ よい ○●
已然/仮定 こければ ●○○○ よければ ○●○○
こけりゃ ●○○ よけりゃ ○●○
連用 こう ●○ よう ●○ *1
連用+テ こうて ●○○ ようて ●○○ *1



過去 こかった ●○○○ よかった ●○○○ *1
仮定 こかったら ●○○○○ よかったら ●○○○○ *1
推量 こかろう ●○○○ よかろう ●○○○ *1
否定 こからぬ ●○○○ よからぬ ●○○○ *1
〃連用 こからず ●○○○ よからず ●○○○ *1
命令 こかれ ●○○ よかれ ●○○ *1
名詞 こさ ●● よさ ○●/●●

3拍形容詞

 近世までの京都語では、3拍形容詞には次の2種類がありました。

近世京都語における3拍形容詞の種類と主な活用形
1類「赤い」等2類「白い」等
赤い●●○ 白い●○○
赤う●●○ 白う○●○
赤かった●●○○○ 白かった○●○○○

 現代の京都語では1類形容詞が2類形容詞に混じってしまっています。1類・2類の混同は、現代京都では3拍以上の形容詞全般に見られる現象です。

 同じ京阪式アクセント分布圏でも、高知・徳島南部などは今も1類・2類の区別が残ることで知られています。また現京都市内のうち旧京北町中川や左京区八瀬でも、少なくとも1910年頃の生まれの方の間では区別がまだ保持されているようです(中井2002)。

3拍形容詞

3拍形容詞「白い」
活用形「白い」
語形 アクセント
終止・連体 しろい ●○○
已然/仮定 しろければ ○●○○○
しろけりゃ ○●○○
連用 しろう ○●○
●○○ *1
連用+テ しろうて ○●○○
●○○○ *1



過去 しろかった ○●○○○
仮定 しろかったら ○●○○○○
推量 しろかろう ○●○○○
否定 しろからぬ ○●○○○
〃連用 しろからず ○●○○○
命令 しろかれ ○●○○
名詞 しろさ ○○●

 3拍形容詞に関しましては、「遅い」はいくつかの活用形で高起が出やすいこと(例:遅かった/●●○○○、遅ございます/●●●●●●●)、これは1・2類区別の痕跡かもしれないことが中井(2002)にて指摘されています。


4拍形容詞

 近世までの京都語には、4拍形容詞には「基本2種+変種1種」の計3種類ありました。

近世京都語における4拍形容詞の種類と主な活用形
1類「悲しい」等 2類「嬉しい」等 3類「美味しい」等
悲しい●●●○ 嬉しい●●○○ 美味しい○●●○
悲しゅう●●●○ 嬉しゅう●○○○ 美味しゅう○●●○
悲しかった●●●○○○ 嬉しかった●○○○○○ 美味しかった○●●○○○

 現代京都語では2類形容詞が1類形容詞に混じってしまっています(3拍の場合とは混同の方向が逆)。ただし京都市周辺では混同後に終止・連体形だけアクセントが変化したため、結果的に1類と2類とを混ぜたような「活用によるアクセント変化」を示すようになっています。

 なおここで用いられている「3類」という呼び方は、充分に確立されたものではありません。研究者によっては別の音調型を「3類」と呼んでいることもあります。

4拍形容詞

4拍・1類「悲しい」と3類「美味しい」
活用形1類「悲しい」3類「美味しい」
語形 アクセント 語形 アクセント
終止・連体 かなしい ●●○○*1 おいしい ○○●○
已然/仮定 かなしければ ●●●○○○ おいしければ ○○●○○○
かなしけりゃ ●●●○○ おいしけりゃ ○○●○○
連用 かなしゅう ●●○○*2 おいしゅう ○○●○
連用+テ かなしゅうて ●●○○○*3 おいしゅうて ○○●○○



過去 かなしかった ●●●○○○ おいしかった ○○●○○○
仮定 かなしかったら ●●●○○○○ おいしかったら ○○●○○○○
推量 かなしかろう ●●●○○○ おいしかろう ○○●○○○
否定 かなしからぬ ●●●○○○ おいしからぬ ○○●○○○
〃連用 かなしからず ●●●○○○ おいしからず ○○●○○○
命令 かなしかれ ●●●○○ おいしかれ ○○●○○
名詞 かなしさ ●●●● おいしさ ○○○●

5拍以上の形容詞

 5拍以上の形容詞のアクセントは、4拍形容詞のアクセントに準じます。

4拍以上のアクセント体系
拍\類1・2類統合類3類
4拍●●○○○○●○
5拍●●●○○○○○●○
6拍●●●●○○○○○○●○
7拍●●●●●○○○○○○○●○

 活用形のアクセントも、4拍形容詞の活用語尾アクセントを応用すれば求まります。

例1・5拍1類2類統合類「暖かい」(4拍の音調を応用する)
終止・連体形
H-3型
連用形
H-3型
過去形
H-4型
うれしい ●●○○ うれしゅう ●●○○ うれしかった ●●●○○○
あたたかい ●●○○ あたたこう ●●○○ あたたかかった ●●●○○○
例2・「大人しい」(4拍で同じく低起の「美味しい」の音調を応用する)
終止・連体形
L-2型
連用形
L-2型
過去形
L-4型
おいしい ○○●○ おいしゅう ○○●○ おいしかった ○○●○○○
おとなしい ○○○●○ おとなしゅう ○○○●○ おとなしかった ○○○●○○○

連用音便形+ナル・オスなどに現れる一語化アクセント

 形容詞の連用音便形に「なる」「する」「おす」「ございます」などが続く形においては、連用音便形とそれに続く動詞とを併せた全体で一語であるかのようなアクセントにしばしばなります。
 この場合全体のアクセントは、前に来る連用音便形の式(高起か低起か)によって決まります。即ち前部が高起なら全体も単独の高起式動詞相当のアクセントになり、前部が低起なら全体も低起式動詞相当のアクセントになります。

 このように一語であるかのようなアクセントが現れる場合、前部の語尾(ウ音便のところ)は短くなる(母音短縮が起こる)のが普通です。
 活用形のアクセントも、式・拍数が同じである単独動詞のそれに準じます。

連用音便形+ナル

 連用音便形+ナルの場合、前述のような無核アクセントに加えて、「なる」の「な」のところに核がある音調も使われます。

 このためたとえば「シロナル(白うなる)」の場合、原則通りの「○●+○●」「●○+○●」に加えて、「○○○●」「○○●○」などの音調も併用されます。


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