基本2類 | 変種 | ||
---|---|---|---|
第1類 | 第2類 | 第3類 | |
2拍 | 濃い/●○類 | ない/○●類 | (該当語なし) |
3拍 | 赤い/●●○類 | 白い/●○○類 | |
4拍 | 悲しい/●●●○類 | 嬉しい/●●○○類 | 美味しい/○●●○類 |
註:当頁で用いている「第3類」という呼び方は充分に確立されたものではありません。書物によっては別の音調の形容詞を「3類」と呼んでいることもあります。
近世京都における形容詞の活用形アクセントを簡略表にまとめました。現代京都アクセントはもちろん、その周辺部のアクセントも大抵はこれを源流としています。
なおここに記載されているのは伝統的な発音に基づいたものです。とりわけ連体形が4拍以上ある形容詞の中には、近世前半の段階で既に音調が不安定な状態になっていたものもあったようで、『平家正節』にも期待されるものとは異なる譜が記載されていることがあります。
これらの形容詞は、どの活用形においても語幹部分のアクセントが無核であるのが特徴です。
活用形\語 | 1類 | 3類 | 後続する 主な助詞や 助動詞 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
2拍 | 3拍 | 4拍 | ||||
濃い | 赤い | 悲しい | 美味しい | |||
終止・連体*1 |
●○
こい
|
●●○
あかい
|
●●●○
かなしい
|
○●●○
おいしい
|
||
已然/仮定*2 |
●●○‐
こけれ‐
|
●●●○‐
あかけれ‐
|
●●●●○‐
かなしけれ‐
|
○●●●○‐
おいしけれ‐
|
‐バ/○ ‐ドモ/○○ |
|
そ の 他 の 活 用 形 |
連用・音便 |
●○
こう
こく |
●●○
あこう
あかく |
●●●○
かなしゅう
かなしく |
○●●○
おいしゅう
おいしく |
‐テ/○ |
カリ活用 |
●○‐
こか‐
|
●●○‐
あかか‐
|
●●●○‐
かなしか‐
|
○●●○‐
おいしか‐
|
‐ッタ/○○○ ‐ラズ/○○○ ‐ラン/○○○ ‐ラヌ/○○○ ‐ロウ/○○○ ‐レ/○○ |
|
語幹 |
●‐
こ‐
|
●●‐
あか‐
|
●●●‐
かなし‐
|
○●●‐
おいし‐
|
‐サ/● | |
語尾変化 パターン |
a |
2類形容詞は「終止・連体形および已然形」と「連用形・カリ活用およびその他」との間で語幹アクセントの交代が起こるのが特徴です。
活用形\語 | 2拍 | 3拍 | 4拍 | 5拍 | 後続する 主な助詞や 助動詞 |
|
---|---|---|---|---|---|---|
無い | 白い | 嬉しい | 暖かい | |||
終止・連体*1 |
○●
ない
|
●○○
しろい
|
●●○○
うれしい
|
●●●○○
あたたかい
|
||
已然/仮定*2 |
○●○‐
なけれ‐
|
●○○○‐
しろけれ‐
|
●●○○○‐
うれしけれ‐
|
●●●○○○‐
あたたかけれ‐
|
‐バ/○ ‐ドモ/○○ |
|
そ の 他 の 活 用 形 |
連用・音便 |
●○
のう
なく |
○●○
しろう
しろく |
●○○○
うれしゅう
うれしく |
●●○○○
あたたこう
あたたかく |
‐テ/○ |
カリ活用 |
●○‐
なか‐
|
○●○‐
しろか‐
|
●○○○‐
うれしか‐
|
●●○○○‐
あたたかか‐
|
‐ッタ/○○○ ‐ラズ/○○○ ‐ラン/○○○ ‐ラヌ/○○○ ‐ロウ/○○○ ‐レ/○○ |
|
語幹 |
●‐
な‐
|
○●‐
しろ‐
|
●○○‐
うれし‐
|
●●○○‐
あたたか‐
|
‐サ/● | |
語幹の長さ (連体/連用) |
1拍 L0/H0 |
2拍 H-2/L0 |
3拍 H-2/H-3 |
4拍 H-2/H-3 |
||
語尾変化 パターン |
b | c | d |
少しややこしく感じられると思いますので整理します。まず連体形型の語幹アクセントは、体系変化前は何拍でも「低く平ら」でした。即ち「よ‐き ○‐」「あお‐き ○○‐」「たのし‐き ○○○‐」のような具合です。これが体系変化を経た結果、それぞれ「○‐、●○‐、●●○‐」のような音調になりました。
一方連用形型の語幹アクセントは、体系変化前は「低く始まって最後だけ高い」という音調でした。即ち「よ‐く ◑‐」「あお‐く ○●‐」「たのし‐く ○○●‐」のような具合です。
鎌倉時代に入る頃になると語頭の上昇拍 ◑ が規則的に ● へ変化しはじめます。これに伴い「よく ◑○」も「よく ●○」に変化しました。この状態(●‐、○●‐、○○●‐)で体系変化を経た結果、連用形型の語幹アクセントはそれぞれ「●‐、○●‐、●○○‐」のような音調になりました。